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上級講座「特許明細書B」 Q&A

通信科受講生から寄せられたご質問を紹介しています。
回答は、上級講座「特許明細書B」担当講師の、小谷文絵先生、長町由希絵先生です。

◆英文法については初級講座「はじめての翻訳文法」Q&A、特許翻訳については初級講座「はじめての特許翻訳」Q&A
中級講座「特許明細書」Q&Aも参考になります。

特許の英訳では、完了形haveがあまり使われず、過去形が多用されているように感じます。
過去形で明確に事実を述べた方がよいのでしょうか。あえて完了形にする場合の決まりごとはありますか。
特許明細書の実施例(実験項)、特に化学系の実験に関する説明文では過去形が最もよく使われます(実際に行った実験なので過去形になります)が、論文でも同様です。
装置や機械の説明では状況を表すことが多いので、過去形はほとんど使われず、現在形の受動態がよく使われます。
現在完了形は最新情報を表すとの説もありますが、たとえば「~を研究した」(~has been investigated)を~was investigatedという過去形で直訳する人も多く、「~を定量した」を~has been determinedと訳すか、~was determinedと訳すかは書く人の気持ち次第です。「(私が初めて)~を定量した」、つまり「定量しようとした人は多かったが、誰も成功しなかった。私が初めて成功したのだ」という心境を表したい場合は現在完了形になります。
また、現在完了形は近い過去(「今やったばかりだ」という気持ち)を表すため、ニュースや雑誌で多用されます。

参考になる書籍を以下にご紹介しておきます。
 ・東京大学出版会「科学英文技法」
 ・化学同人「120パーセント 科学英語 早く手軽にマスターするコツ」
 ・化学同人「科学英語のセンスを磨く」
RNA- based, an enzyme-incorporated polyion complex, air-dried, 3-mm, enzyme-containedなど、ハイフンの意味と要不要を教えてください。
基本的には、複数の単語からなる1語(複合語)であることを明確にするためにハイフンを使用します。
上記のair-dried, 3-mm以外は、ハイフンがあれば1語と理解しやすくなります(air-dried, 3-mmのハイフンはほぼ必要ないでしょう。
また、RNA based~は定型文のようになっており、ハイフンがなくても容易に理解できます)。
ハイフンがあった方が読みやすいと感じることもありますが、私の経験上、上記いずれの場合でもネイティブはほとんどハイフンを使っていません。 一般的な英語ライティングについては、以下の書籍も参考になります。
 ・DHC「英語ライティング ルールブック 正しく伝えるための文法・語法・句読法」
技術的知識が不十分で、どの名詞に修飾句や節が係るかよく迷います。
関連する特許を探すようにしていますが、他に何かアドバイスがあればお願いします。
課題(テキストの例文を含む)は明細書の抜粋なので、技術内容がわかりにくいかもしれません。
明細書全体を読むとヒントが見つかることもありますが、それでもわからない場合は文法から判断せざるをえません。
ちなみに、詳しい知識を持たない分野をどのように攻略するかは、翻訳を勉強している方ばかりでなく、現役の翻訳者にとっても大きな課題です。社会人になってから専門学校や大学に入って勉強したという例もありますが、簡単に真似できる方法ではなく、大学生向けの専門書で一から勉強するのも大変です。そこで、新しい分野の知識を翻訳者がどうやって増やしているかについて少しお話しましょう。
まず、翻訳の勉強を終えてトライアルを受ける段階になると、専門分野をある程度確定しなければなりません。本講座を受講中の方なら化学系を検討されているかと思いますが、一口に化学系といっても、純粋な材料関係、金属、生化学(バイオ)、医薬品など多方面にわたります。勉強中はそれほど専門にこだわる必要はありませんが、何に興味があるかを少しずつ見極めていきましょう。
話が少しそれましたが、依頼された案件の翻訳を始める前には、その案件がどのような分野なのかをざっと調べます。
たとえば液晶関係であれば、液晶の概要を簡単に頭に入れます。専門書を参照するのも結構ですが、インターネットで情報を入手することも可能です。
たとえばシャープのWebページには、液晶に関する明快な解説が掲載されています。
大手企業や学会のWebページを活用するのもよいでしょう。ライフサイエンス辞書など、学会のWebページによっては用語集が掲載されていることもあります。液晶ほどメジャーな分野ではない場合、その案件のキーワードを手掛かりにしましょう。幸いなことに、特許には「本発明は、~に関する。」というキーワードがあるので、辞書やWebで調査し、関連する技術を確認します。関連技術を探すのも経験なので、詳細な説明は控えますが、Web検索で上位にヒットしたページに注目すると共通の話題に気付くはずです。これらの情報源を活用し、ある程度の知識を獲得したら翻訳に着手してください。特許には背景技術という説明箇所があり、関連技術を知ることができます。翻訳を終えた後、よくわからなかった点を専門書で勉強するのもよいと思います。ちなみに専門書は一から読むよりも、不明点を調べるために使う方が合理的でしょう。キーワードを調査する、キーワードに付随する情報を参照する、原文の説明を参考に知識を補充する、時間があるときに疑問点を解決するといった基本を徹底する努力が物を言います。

ところで、英語を理解するのと翻訳するのは別問題なので、文法書で得た文法知識だけでは足りないこともよくあります。
そのようなときは翻訳する上で不可欠な事柄が盛り込まれている「翻訳の泉」を活用しましょう。私は、執筆者の岡田先生から「3カ月に1回は目を通すように」とたびたび指導されました(つまり、毎日少しずつ目を通せということですね)。

Web検索に関する書籍やムックをいくつかご紹介しておきます。
 ・イカロス出版「特許翻訳入門&上達ガイド」 ※新版よりも旧版の方に詳しい解説が掲載されています
 ・イカロス出版「翻訳者のためのパソコン使いこなしパーフェクトガイド」
  ・創藝舎「グーグル完全活用本」
日本語の意味の区切りを明確にしようとすると句読点が多くなりがちです。句読点の打ち方に決まりはありますか。
基本的に主語の後には読点を打ちます。短い文では主語の後に必ずしも読点を打たなくてもかまいませんが、長文の場合(特に主語が長い場合)には、主語を明確にするために読点を打つ必要があります。
また、ある名詞に句(節)が係っている場合、係る名詞が離れているときは読点を打たなければなりません。たとえば、「成分A、B、Cなどを含む、有効成分を含有する本発明の化合物」という場合に「成分A、B、C」は「本発明の化合物」に含まれています。「含む」の後に点がないと「有効成分」に係ると誤解されます。ちなみに特許などの科学技術文書では、一般の文章よりも句読点が多くなります。
参考になる書籍を以下にご紹介しておきます。

 朝日新聞社「中学生からの作文技術」
 ※「中学生からの」と銘打たれていますが、非常によくまとまっており、社会人にも十分に役立ちます。
「日本語の作文技術」、「実戦・日本語の作文技術」も同じ著者によるものですが、新聞記者などのライターが対象なので、読むのがなかなか大変でした。
Text5 Section10では例文8の最終文「・・・該形質転換細胞から精製することにより調整することが可能である」の「調整する」がcan be produced、例文9の最終文「・・・精製することにより調整することができる」の「調整する」がcan be preparedと訳されています。
どちらも「精製することにより調整する」となっていますが、produceとprepareが使い分けられています。
どのように訳語を選択すればよいのでしょうか。
まず漢字を訂正させていただきます。ここでは「調整」ではなく「調製」です。(生)化学、医薬系では、「試薬を調製する」のように「調製」がよく使われます。ワープロソフトでも誤変換されることが多いので、注意してください。
私の経験に基づく説明になりますが、化学分野での「調製」は「目的の試薬や化合物を作製するために材料を混合または反応させる行為」を指します。混合するだけでも「調製」、反応させても「調製」というので、極めて幅広い用語だと思います(英語では一般的にprepareを用います)。produceを「調製する」と訳すことも可能ですが、「生成する」「生産する」「産出する」「産生する」などが一般的な訳語であり、prepareとproduceは使い分けることが多いといえます(ただし絶対ではないので、内容から判断します)。
しかし、生化学分野ではproduceも調製の意味でよく使用されることが多く(ただし、「調製」よりも「産生」や「生成」ということの方が多いと思います)、化学分野では同様の区別をしないことも少なくないようです。そのようなわけで、produceとprepareの区別はまちまちで、明確な基準は特に見当たりません。
細胞などが作る場合(例文8:形質転換細胞から精製することにより調製)にはproduceが適切と考えますし(ただし、本来の日本語としては「調製」よりも「産生」の方がよいでしょう)、例文9では、すでに目的のタンパク質が発現している細胞から調製した抽出液を使用して調製しているのでprepareを使うのが適切かと思います。
テキストの例文の元和文では、すべてに「調製」が使われているため区別しにくいのですが、細胞などが作る場合とそれ以外を区別すると分かりやすいでしょう。
医療機器などの機械に関する特許明細書が苦手です。
経験の少なさに加えて、機械部品の構造や動きを表現する語彙が乏しいせいか、適切な訳語を探し当てるのに苦労します。
機械関連の語句・訳語や意味がわかりにくい語を調べるのに役立つウェブサイト、参考書、資料などがあれば教えてください。
医療機器は当分野に分類されることがあります。
医療機器の用語については、和英と英和のいずれにも役立つ次の1冊で十分でしょう。
 ・薬事日報社「医療用具の一般的名称と分類」
なお、上記の書籍がなくても、インターネットのキーワード検索などで有益な情報を得るのは難しいことではありません。
類似分野の特許文書を参考にされるのもよいでしょう(特許電子図書館)。
テキストや課題では文章が短いので、訳語不統一の問題はあまり生じませんが、明細書全文だと、既出の用語ということを忘れて前半と後半でうっかり別の訳語を当ててしまうことがあります。
訳語統一に効果的な工夫があれば教えてください。とりあえず、繰り返し使われそうな用語を訳語リストに蓄積するほか、短期記憶に頼っているという状況です。
・訳語リストを作成する。 ※実践している翻訳者は多いようです。
・原文と訳文を「紙面」で照合する。
※PC画面の左右に並べて照合する方もいますが、紙面の方が訳語不統一、訳抜け、変換ミスを発見しやすいと思います。
・原文を一括で検索/変換する。
※原文データの特定の用語を一括置換しながら上書き翻訳するか、別の方法で翻訳した後、原文の「該当用語の数」と対応する「訳語の数」とをPCの検索機能で比較し、抜けや不統一がないか調べるという方法です。

私自身は、紙面で照合するために納期の数日前に訳し終えるようにしています。今のところソフトは導入しておらず、上記のように地道な手作業に終始していますが、それでもミスはかなり減りました。
TEXT3のpage16の英訳の例文と訳例1では「材質」と「材料」のどちらもmaterialですが、訳し分けなくてもよいのか、あるいは異なる文脈で頻繁に使われるような単語(process、applicationなど)には場所によって別の訳語を当ててもよいものかなど、あれこれ考え込んでしまいます。
訳語を厳密に統一すべき場合とそうでない場合の境目はどこにあるのでしょうか。
クライアントの指示を最優先した後、訳し分けに大きな意味がない限り訳語は統一するのが基本ですが、これについては明確な基準がありません(文書の内容によって基準が異なります)。
しかしながら、文脈に合わせてニュアンスの違いを訳し分けることで指摘を受けることはないでしょう。
たとえば、明らかに「基板」という意味で使用されているsubstrateを気まぐれや不注意から「基材」と訳すと混乱を招いてしまいます。
それに対し、同じ文書の中で酵素に関連して「基質」と訳す必要が生じた場合は、そのように訳し分けなければなりません。
訳し分けの効果が微妙と思われる場合や、ご自身のセンスで訳し分けた場合には、その旨を用語リストに記載した方が丁寧でよいでしょう。
なお、「翻訳の泉」の「翻訳のマナーと規則」には訳語統一を図るべき理由が書かれています。

【訳し分けの例】
 ・treat:治療する、処理する
 ・substrate:基板、基材、下地、基質(酵素関連)
 ・adjuvant:助剤(製剤関連)、アジュバント(ワクチン・タンパク質関連、「抗体」と対の場合)
 ・growth:成長、増殖(培養関連)
 ・subsequent:その後、続いて(インターバルがあるかどうか)
 ・product:産物(バイオ)、生成物(化学)
ケアレスミスが多い原稿やノンネイティブが執筆した原稿には1頁にいくつもミスが含まれていることがあります。
気付いた箇所にもれなくコメントを付けると大変な手間がかかります。どの程度まで不備を指摘すべきなのでしょうか。
コメントの主な目的は、原作者/発明者/クライアントへの通知です。
既に外国語出願されているPCTでは、原文の誤りをそのまま訳します(指摘するのみ)。
たとえ不完全な文でも、訂正して訳すと提出済みの出願内容とは異なってしまう恐れがあるからです。
ただしパリルートでは、まず日本で出願されることから、原文を訂正した上で訳してよいことになっています(注意:パリルートでも、既に外国語出願されているものは訂正しません)。
サン・フレアでは、原文が相当の悪文という場合には担当コーディネータに相談することもできますが、ほとんどは翻訳者側で処理しています。そのような処理を限られた時間内で行うのは煩わしいものですが、タイプミスや接続詞抜けなど、できるだけ細かく指摘するのが理想的かと思います。
和訳の際、英数文字には原則として全角を使っていますが、テキストの引用文献などでは半角になっている個所もあります。
また、in vivoやet al、学名など、本来はラテン語で斜体にすべき個所、雑誌名のように原文では斜体になっている部分などでも、翻訳例では斜体になっていません。
全角と半角、斜体などを使い分ける基準を教えてください。
まず、クライアントから指定された用語・書式・文体は尊重しなければなりません。
翻訳要件を明確にし、高品質の翻訳を求める発注元からは、書式や文体のサンプル・用語集が提供されることがあり、全角と半角も指定されていることがほとんどです。
そのような指示がない場合は、「ミラートランスレーション」(原文体裁の尊重)が基本です。
特に段落分けは(書式の指定がない場合)原文どおりとし、1行空けや字下げ明確に示す必要があります。インデント、箇条書きなども一般に原文どおりです。
なお、欧文では目立たせるために斜体や下線を使用していますが、その必要がない和文では、特に指定がない限り標準的な表記とします(斜体も下線も設定しません)。
岡田信弘先生から「特許英文ではハイフン("-")は使わない」とのご指摘があり、cholesterol carrying LDLという例をご提示いただきました。コレステロールはLDLより分子が小さいので、cholesterolとcarryingの間にハイフンがなくても、「LDLを運ぶコレステロール」ではなく、「コレステロールを運ぶLDL」の意味になるとのことです。
「AをcarryするB」という意味を明確にするにはA-carrying Bとハイフンを入れた方がわかりやすいようにも思うのですが、いかがでしょうか。
ハイフンは入れても間違いではありませんが、多用すると読みにくくなります。
cholesterolとcarrying、groupとcontainingの例は、ハイフンがなくても包含関係(大小関係)が読み手にとって明らかです。
一方、ハイフンがないと意味が通らない場合には、誤解されないようにハイフンで係り受けを明確にします。

[例] data controlling signal
 ①データを制御する信号 ②信号を制御するデータ
※どちらかが不明なので、①の場合はハイフンを使用すべきです。

A carrying Bが「AをcarryするB」であることが極めてわかりにくい場合には、やむを得ずハイフンを使用しますが、その意味ではB carrying
Aと記載するのが普通です。岡田先生は、絶対に使用するなということではなく、使用は必要最小限にとどめよとおっしゃったのでしょう。
英訳するとき冠詞の使い方に迷ってしまいます(可算名詞なのか不可算名詞なのかが辞書に載っていない場合、日本語原文では分からない複数形の使い方など)。
よい解決方法があれば教えてください。
まず、辞書に記載されている可算・不可算の区別をそのまま英訳の際に適用できるとは限りません。
たとえば「不可算名詞」でも「種類を表す」、「明確な単位がある」、「個々の具体的な事象を表す」ときには「可算名詞」として扱われることがありますし、逆に「可算名詞」が「抽象的な概念・内容」を表すときには「不可算名詞」として扱われることもあります。そうなると、可算・不可算のどちらとして扱うべきかは原文の内容から判断せざるを得ません。可算・不可算の区別が辞書に記載されていない用語については、その用語の特徴や使用方法を文献やインターネットで調査するという方法が有効です。ちなみに特許文書では、単数が複数を包含すると考えられているため、特に明示していない限り(または複数であることが自明でない限り)単数を選択します(参考書籍:合衆国特許クレーム作成の実務、経済産業調査会)。

冠詞の理解に役立つ書籍を挙げておきます。
 ・研究社「理化学英語の冠詞の用法」
 ・大修館書店「わかりやすい英語冠詞講義」
 ・大修館書店「例解 現代英語冠詞事典」
物質名の訳語をWeb検索すると、ローマ字読みや英語読みをカタカナにしたものや「酢酸エチル」のように漢字カナ混じりにしたものなど様々な表記にヒットします。
そのため、Web上での使用頻度に基づき訳語を当てると、異なったタイプの表記が混在してしまいます。適切な訳語を見極めて表記を統一するコツや基準はありますか。
表記が混在せざるを得ないこともあり得ますが、物質名が正確に訳されていれば問題ありません。

≪化合物を訳す際のポイント≫

①長い名称はたいてい音訳する
 [例] 2,4-di-t-butylphenol-5,5-di-t-butyl-4-hydroxybenzoate
 2,4-ジ-t-ブチルフェノール-5,5-ジ-ブチル-4-ヒドロキシベンゾアート

②使用頻度にも注意する
 [例] ethyl piperidylacetylaminobenzoate
 ピペリジルアセチルアミノ安息香酸エチル
 ※原語は長い名称だが上記の訳語が一般的な表記
 [例] Ester oils of this type can then advantageously be selected from the group isopropyl myristate, isopropyl palmitate,・・・,n-butyl stearate, ・・・and synthetic, semi-synthetic and natural mixtures of esters of this type, for example jojoba oil.
 このタイプのエステル油は、ミリスチン酸イソプロピル(※イソプロピルミリステート(×))、パルミチン酸イソプロピル、・・・、ステアリン酸n-ブチル、・・・ならびにこのタイプのエステルの合成、半合成、および天然混合物、例えばホホバ油の群から有利に選択することができる。
 ※「イソプロピルミリステート」よりも「ミリスチン酸イソプロピル」の圧倒的に高い。

③分野による傾向 ポリマー分野では、methyl methacrylateを「メタクリル酸メチル」ではなく、「メチルメタクリレート」のようにカタカナで表記するのが一般的。
 [例] These monomers are well known, and include, for example, acrylates, methacrylates, acrylamides and methacrylamides and derivatives thereof. Exemplary acrylates and methacrylates include, but are not limited to, various (meth)acrylate derivatives including, methyl methacrylate, ethyl methacrylate, ・・・,hydroxybutyl methacrylate, 2-ethylhexyl(meth)acrylate, and their salts.
例示的アクリレート及びメタクリレートには、それに限定されるものではないが、様々な(メタ)アクリレート誘導体、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、・・・、ヒドロキシブチルメタクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びそれらの塩が含まれる。

④塩とエステルのどちらなのか。不明な場合は音訳する。
 [例] phosphate  リン酸塩/リン酸エステル/ホスフェート
 [例] pharmaceutically acceptable acid-addition salts of the compounds according to the invention include the following: acetate, adipate, alginate, ・・・chlorobenzoate, cyclopentanepropionate, digluconate, dihydrogenphosphate, dinitrobenzoate,.
 本発明の化合物の医薬として許容可能な酸付加塩には以下の、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、・・・クロロ安息香酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、リン酸二水素塩、ジニトロ安息香酸塩が含まれる。

[補足]
・ateになっていても「塩」がつかない例
 tetraoxochlorate ion テトラオキソ塩素酸イオン
・複雑な化合物名
 sodium ethyl succinate コハク酸エチルナトリウム
 lead lanthanum zirconate titanate ジルコン酸チタン酸鉛ランタン
 sodium borohybride 水素化ホウ素ナトリウム

化合物命名法については以下のWebページも参考になります。
 化合物命名法談義
明細書に段落番号を付けるときは、タイトルも段落番号を付けて1段落として数えるべきでしょうか。
タイトルに番号を付けないとすると、タイトルは段落番号の前後どちらに配置すべきでしょうか。
項目名(タイトル)と段落番号については、案件ごとに付されているクライアント指示に従います。
以下のようにタイトルには番号を付けず、その後に付けるというパターンが一般的に多いようです。
[例]
【発明の名称】 XXX
【発明の分野】
 【0001】
 本発明は、~
【関連技術の説明】
 【0002】
 従来、~
和訳する際、日本語では一般的に複数形を使いませんが、物質名などを列挙するときには単複を厳密に訳した方がよいのでしょうか。たとえばalcoholsは「アルコール類」としてもよいのでしょうが、アルコールは単一の物質を表す語ではないので、「アルコール」としても複数の物質を含めた意味になるのではないかと思います。また、substrate or substratesのように単複が併記されているときなど、どのように訳すべきでしょか。「複数の~」「~類」のほかに、日本語で複数を表す使いやすい表現があれば教えてください。
ご指摘のように、alcoholsは様々なアルコールを包含すると解釈できるので、「アルコール」とすれば十分という場合も多いでしょう。ただし、文脈によっては「類」等を明確に訳すと分かりやすくなることもあります。

[例]
 ・alcohols such as methyl alcohol メチルアルコールなどのアルコール類
 ・Preferred water-soluble organic solvents are monohydric alcohols, ketones, bis(hydroxyethyl)sulfone, glycerol, ethylene glycol.
 好ましい水溶性有機溶剤は、1価アルコール類、ケトン類、ビスヒドロキシエチルスルホン、グリセリン、エチレングリコールである。

また、the 名詞sは単に複数を意味していることが一般的に多く、「複数の~」「~類」のほかに「各種~」「諸~」「各~」と訳すと適切な場合もあります。

[例]
 ・along the axes 各軸に沿って/各軸方向の
 ・Numerous mutation studies of the CD4 protein have been carried out to determine the regions of CD4 involved in the MHC class II binding
 MHCクラスII結合に関与するCD4の諸領域を決定するために、CD4蛋白の変異に関する研究が多数実施されてきた。

なお、substrate or substratesはone or more substratesと同じであり、「1つまたは複数の基材」などと訳します。
名詞を修飾する際に複数の形容詞や副詞が連なる場合、andとカンマのどちらで区切るべきでしょうか。
形容する語をハイフンでつなぐ場合とそれ以外の区別もよくわかりません。
基本的には「異なる品詞をコンマ、同じ品詞を接続詞」でつないだ上で、原文の係り具合によってまとめ方を決めます。

[例] 実質的に極めて滑らかで、有意に柔軟なフィルム
①substantially and extremely smooth, significantly soft film
 「実質的に」が「滑らか」に係る場合
②substantially, extremely smooth and significantly soft film
 「実質的に」が形容部分のすべてに係る場合

係りを明確にしたい場合にハイフンを使用します。

[例] data controlling signal
 ①データを制御する信号? ②信号を制御するデータ?
 上記のどちらの意味なのかが不明になる恐れがあります。したがって、①の場合はハイフンを使用すべきです。

[例] sidewall-defining edge 側壁を画定する縁部
和訳の際、「受動態」→「能動態」または「能動態」→「受動態」のように態を変換する場合とそうでない場合があるように見受けられます。
判断基準や決まりがあれば教えてください。
筆者自身の行為ではない説明箇所で、どちらにも訳せる部分については、なるべく原文の態を残して訳します(受動態も能動態も原文に合わせます)。ただし、英文の受動態をすべて訳文に再現すると、訳文の語尾が冗長になることがあります。したがって、変換して効果がある場合、あるいは必要に応じて態を変換します。

【態の変換の例】
 ・無生物主語 無生物が主語の他動詞文については、そのまま訳すと日本語として不自然になる場合、受身の形に訳すことが多いでしょう。使役動詞やそれに準じる動詞(enable、permitなど)が使われている場合は特にそうです。
 [例] The finer aluminum crystallites result in a more flexible metal film.
 アルミニウム結晶子が微細化しているために、柔軟性の増加した金属フィルムが得られる。
 [例] The rest results demonstrated that~
 試験結果によって~が示された。

 ・列挙を表すinclude includeは含まれる成分やパーツを示す場合と例示を示す場合がありますが、前者は能動で訳し、後者は受動またはそれに準じた形で訳します。
 [例] Solid liquid carriers include lactose, sucrose, gelatin, agar and bulk powders.
 固体担体の例には、ラクトース、スクロース、ゼラチン、寒天、およびバルク粉末が含まれる。

 ・実験や試験の経過・結果を記載する【実施例】など、発明者自身の行為を表す箇所については能動態で訳します(受動態→能動態)。
 [例] The control device was prepared in the same manner as Device A.
 素子Aと同様にして対象素子を作製した。

詳しくは「翻訳の泉」の「第2回 受身の話」を参照してください。
関係詞that、which、, whichの使い分けを教えてください。
that、whichは限定用法、, whichは付加用法です。

[限定用法]
Take the shoes that/which are in the closet.
※靴は下駄箱にもあるが「押入れにある」靴に限定している。

[付加用法]
Take the shoes, which are in the closet.
※靴がどこにあるかを付け足した言い方。

限定用法でwhichを使えず、thatを用いる必要があるのは以下のケースです。
 ①先行詞が「人+物/人+動物」である
 ②先行詞が疑問詞である(Who that know the truth?)
 ③先行詞に形容詞の最上級、序数詞が付いている(the only, all, no, any every, the very等)

詳しくは「翻訳の泉」の「第7回 関係詞の話」を参照してください。
one or moreを「1種類以上」と訳すのは不適切とテキストに書かれていますが、辞書には「1以上」という訳語が載っています。
two or moreを「2種類または複数の」と訳すのは不自然とは思いますが、「2種類以上」と訳すのも不適切でしょうか。
one or more monomersはa monomer or more monomersと同じ意味で「単数(1つ、1種)」であるか「複数」であるかという二分された数の集合を概念的に表現しています。それに対して「1つ以上」は、1を含むひとくくりの集合です。この日本語自体に誤りはないので、辞書にも記載されていますが、厳密な意味では何を問題としているかが曖昧な表現です。したがって、権利範囲を明確にすべき特許文書の特性を考えると、one or moreは「1つ(1種)または複数の」と訳すべきでしょう。
two or moreは「2つ(2種類)以上」が適切です。この表現の真意は「複数個の」であり、逆に言えば「1つ」では役に立たないということだからです。
and、orの係り具合(前後のどこまで係るか)に不安があります。見分け方を教えてください。
係り具合を決定する要素は「文の形と意味」です。
*「文の形」とは、複数を表すsが付いているか、形容詞形や名詞形などで見分けられるグループがあるか、またはコンマの位置等。「文の意味」については、専門書やインターネットを活用し、技術的な内容を調査して理解することに力を入れること。
特に専門外であれば、翻訳作業の多くが調査に費やされることでしょう。

お役に立ちそうな情報源を以下にご紹介します。
 ・翻訳の泉
 目を通すだけでも実力が付きます。私自身は「翻訳の泉」の全文をExcel形式で検索可能にしているほか、ひととおり定期的に読み直しています。
 ・講談社サイエンティフィク「特許翻訳の基礎と応用」
 ・日刊工業「例文詳解 技術英語の前置詞活用辞典」
 ・研究社「理化学英語の冠詞の用法」
bring into associationが「混合する」と訳されていますが、あれこれ調べても同じ訳例が見つかりませんでした。
Web上や辞書で見つからない訳語を工夫したり、その妥当性を確認したりする方法を教えてください。
筆者の造語など、辞書にない表現については、類似表現の訳を参照する、インターネットで用法を検索するといった方法で訳語を決定します。
bring intoには「(ある状態に)至らせる・させる」という使役の意味があるので、「associationの状態にさせる」→「会合させる、結合させる、組み合わせる」など、訳語の候補が見つかります。たとえば、類似表現bring into contact withについては「~を接触させる」などの訳語が辞書に記載されていますし、bring into associationをGoogle検索し、実際の使用例を確認するのもよいでしょう。その上で文脈に合う訳語を絞り込んでいきます(たとえば、製剤において活性薬剤と担体は普通反応しないので、「結合」という訳語は排除できます)。ただし、翻訳者自身が工夫した訳語は「仮訳」とも言えるので、「用語リスト」に記載して訳文データと共に納品しましょう。
こうした作業は時間を要し、煩わしいかもしれませんが、情報収集の労力は無駄にならず、必ず後で活きてくるはずです。
1-8頁の1.1関連出願の相互作用の例文(コラム1,3行~)の4行目と8行目のherebyは、「本説明書に」と訳すのでしょうか。
herebyとhereinの使い分けもよく分かりません。
herebyは多くの場合、例文のような特許独特の言い回しに使用されます。
 the disclosure is herein/hereby incorporated by reference
 (その開示を参照により本明細書に組み込む/合体する、ここに参考として援用する)など。
herebyはincorporatedの前に置かれますが、hereinは後に置いても構いません。
hereinはThe term "aryl" as used herein means ~(本明細書/ここで使用される「アリール」という用語は、~を意味する。)などに使われ、herebyよりも適用範囲が広い用語です。
catalytic processが「接触方法」となっていますが、「触媒工程」と訳すべきではないでしょうか。
機械工業分野ではprocessを主に「工程」と訳しますが、化学分野のprocessは「方法」と訳す場合が圧倒的に多いでしょう。特にクレームに登場する典型的なフレーズA process for preparing a composition, comprising~などは、「~を含む、組成物の調製方法」と必ず訳します。クレーム以外の地の文でprocessを「方法」と訳すと落ち着かない場合、あるいは「方法」と訳すべきmethodが同一文書に登場する場合には、「プロセス」と訳しておくとよいでしょう。また、「工程」には一般にstepが対応し、たとえばstep1→step2→step3の全体に言及する場合には「3工程プロセス」と表現し、stepが1つしかない場合には、たとえばa one-step continuous process「一段階連続法/一段階連続プロセス」と表現します。
...fold decreaseが「~分の1に減少」となっていますが、「~分の1減少」ではありませんか。
変化量ではなく、~(数値)まで減少したことを意味するのでしょうか。
減少に関してfoldが用いられている文は前置詞がなくても変化量を表します。decreased by 2.75±0.59のようにbyを付けても同じ意味になります。
2 fold(2倍)と100 fold(100倍)を比較すると、byなどの有無にかかわらず、後者の減少量の方が大きいことになります。ご指摘の解釈に従うと、2 foldでは半分も減少するのに、100 foldでは100分の1しか減少しないことになります。
このような英文は「10倍減少した」と直訳せず、「10分の1に減少」と訳すと日本語らしい表現になります。
「物を中味の全体として含む場合はcontain」、「ある物を中味の一部として含む場合はinclude」、「必然的に含む場合はinvolve」というような説明が辞書にありますが、特許翻訳の場合、どのような基準で使い分けられているのでしょうか。
特許文書は技術文書でもあるので、辞書の示す基準から文法や表現を逸脱させるべきではありません。特許の実務においては、該分野で汎用的なのか、類似用語が適切に訳し分けられているかなどを考慮しつつ、あらゆる用語を辞書に忠実に用いるのが基本です。特許翻訳に独特と思われるクレーム部分、たとえば「~のステップを含む」という表現にしても、最も重要な点である「権利範囲を制限しない」ことが守られている限り、compriseとincludeのいずれも使用できます(comprise/include the steps of ~)。つまり、「特許ならではの基準」ではなく、最終的には「どの辞書に準ずるか」が訳語選択の基準になるでしょう。contain、include、involveに関してはご指摘のとおりです。権威のある辞書であれば、これらの説明にさほどの差違はないので、定義に従って使い分けてください。
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