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はじめての特許翻訳Q&A

通信科受講生から寄せられたご質問を紹介しています。回答は、「はじめての特許翻訳」担当講師の、今村聡子先生です。

テキストP-34に、permittingは「分詞構文でも物主構文でもある」と書かれています。分詞構文と物主構文について説明してください。
分詞構文とは、分詞(現在分詞、過去分詞)を用いて副詞句または形容詞句を形作る構文で、主節の前または後に置かれます。
分詞構文が表す意味には、「時」、「条件」、「譲歩」、「理由」、「付帯状況」、「手段」、「文の連続」、「結果」などがあります。
いくつか例を挙げてみましょう。

Arriving at the station, I found the train was just starting.
⇒(駅に着いた時、ちょうど列車が出発するところだった。):「時」を表す分詞構文。
“when”などで書き換えることができます。
Having no money with me, I couldn’t buy the dictionary.
⇒(お金がなかったので、私はその辞書を買えなかった。):「理由」を表す分詞構文。
“because”などで書き換えることができます。
Turning to the left, you’ll find the post office on your right.
⇒(左に曲がると、右手に郵便局がありますよ。):「条件」を表す分詞構文。
“when”などで書き換えることができます。
Not feeling well, I attended the meeting.
⇒(気分がすぐれなかったけれども、私はその会議に出席した。):「譲歩」を表す分詞構文。
“although”などで書き換えることができます。
⑤She was sitting on the sofa, surrounded by her grandchildren.
⇒(彼女は孫たちに囲まれて、ソファに座っていた。):「付帯状況」を表す分詞構文。
“while”などで書き換えることができます。
⑥He entered this university directly upon finishing high school, graduating four years later at the head of his class.
⇒(彼は高校卒業後すぐにこの大学に入学し、4年後には首席で卒業した。):「文の連続」を表す分詞構文。
“and”などで接続することができます。

以上のように分詞構文は、「接続詞があるべき箇所から接続詞を取り除き、動詞を分詞に置き換えたもの」といえます。
分詞構文は奥が深く、上記以外にも「独立分詞構文」、「懸垂分詞構文」などがあります。特許文書でもよく見かけるので、文法書を読んでみることをお勧めします。
また、物主構文は「無生物構文(主語)」とも呼ばれ、文字どおり、生物以外のものが主語になった文章(構文)を指します。
そのような構文の一例は“Ten minutes' walk brought me to the park.”ですが、「10分の歩きが私を公園に連れてきた」と直訳せず、「私は10分歩くと公園に着いた」のように訳すと自然な日本語になります。
テキストP-34の“permitting” も主語が“the pocket”なので、物主構文に相当します。
初めて遭遇した専門用語については、どのような情報源から調べ始めるのですか?
特許電子図書館などでしょうか?
私の場合は専門辞書、インターネットという順序で調べます。
インターネットでは、専門辞書に載っていなかった用語の訳語を検索するばかりでなく、専門辞書の訳語が該当分野において同様の用法や文脈で使用されているかどうかについても調査します。
特許電子図書館や、 WIPOのサイト欧州特許庁のサイトも活用しています。それぞれの検索方法については、各サイトをご覧ください。
ただし、調べる対象の形、大きさ、用途などがまったく分からないままでは翻訳を進められません。
では、どうすればよいのでしょうか。
訳語が不明な状態でも、対象の形状をGoogleのイメージ検索で把握する、その語が含まれている英文を検索して前後を読んでみるなど、できることはあるはずです。
対象のイメージをつかんだら、同じような物が日本語で何と呼ばれているのかを、関連がありそうなキーワード(材料名、製品名、会社名など) と共にインターネットで調べてみましょう。
例えば“manufacturer|manufacturers”、“supplier|suppliers”などの語と組み合わせれば製造業者を検索することもできます。
「これかもしれない」と思う用語が関連文献で見つかる場合もあるので、どのように訳されているのかを調べてみるとよいでしょう。
翻訳に費やせる時間は限られていますが、なるべく多くの文章や関連文献を読むことが突破口につながります。
なお、どの手段でも見つからなかった用語については、カタカナで記載し、直後に(丸括弧で囲んで)スペルアウトしています。
関係詞のwhich 以下が長い場合、「訳し上げ/訳し下げ」の判断基準はありますか?
高校などでは、関係詞の前にコンマがなければ制限用法、コンマがあれば非制限用法で、前者は後ろから訳し、
後者は前から訳すようにと教わりましたが、そのルールに書き手が従っていない場合もあるので、文脈に応じて判断する必要があります。
関係詞による修飾が不可欠で、それがないと文意に反してしまうケースについては特に注意しなければなりません。

[例1]
A patent application or a patent may not be amended in such a way that it contains subject matter which extends beyond the content of the application as filed.
 特許出願または特許は、出願時のその出願の内容から逸脱する主題を含むような形で補正することはできない。

関係詞以降を訳し上げると話の流れが乱れてしまう場合は訳し下ろしますが、 ここでwhich以下を訳し下ろすと、前半部分は「特許出願または特許は、主題を含むような形で補正することができない」となります。
主題がない特許は無意味なので、完全に文意が損なわれてしまうことがお分かりになるでしょう。

[例2]
The arm including capacitor 20 is in series with coil 12, which in turn is connected in series with fixed grounded capacitor 22.
 コンデンサ20を含んでいるアームはコイル12と直列であり、コイル12は固定接地コンデンサ22と直列に接続されている。

この場合の“in turn”は主題の転換、つまり「話換わって」というニュアンスです。
したがって“which”以降では、主文の主語である“The arm”から“coil 12”へと主語が転換し、「(話換わって)コイル12(の方)は~」と続きます。
“which then …”なども同様に、主文の内容に続く論理展開を表しているので、流れに沿って訳し下ろしましょう。
以上のようなケースでなければ、読み手に最も伝わりやすいと思われる形で処理しています。
訳語選択の考え方を教えていただけますか?
複数の用例がネットで検索されましたが、ベストの訳語の選び方がよくわかりませんでした。
私の場合、まずは専門辞書を引いて適切な訳語を探します。
いくつか候補が見つかった場合には、関連する語と結び付きが強いものを選択します。
例えば、“to operate fuel
cells”とあり、「燃料電池」を「動作」または「作動」させるのか、それとも「運転」するのか迷った場合、それぞれについてGoogleのフレーズ検索のを実行結果を確認し、用例がそれなりにあって明細書の前後の文脈に即している表現を選択しています。
まずは、専門辞書を足がかりにしてみてください。
provideという単語は、一般的に「提供する」と訳されていますが、「翻訳者はこの訳語を使ってはならない」という意見をよく耳にします。
「与える」、「備える」、「示す」、「説明する」、「配布する」、「~できる」、「利用できる」、「増やす」など、さまざまな訳語がありますが、特許翻訳ではどれがよく使われているのでしょうか。
分野や発明者の好みにもよるでしょうが、それぞれの訳語の用法や使用頻度を教えてください。
挙げていただいたもの以外にも、「供給する」、「形成する」、「もたらす」、「実現する」、「設ける」、「用意する」など、
“provide”の訳は多岐にわたっています。 原文と対訳を簡単に比較する手段は残念ながら特にありません。
ご質問の特許翻訳で一般的な訳語や使用頻度を調べるのも容易でないため、私自身の見解と方針を述べさせていただきます。
まず、「provideを『提供する』と訳してはならない」との意見があるそうですが、“provide”の中心的な意味は「提供する」なので、「(人に)差し出す」という意味で使われていれば「提供する」と訳して何ら問題はないでしょう。
「本発明は~する装置(方法)を提供する(ものである)」などのフレーズはよく見かけますし、上記のような文脈では私自身「提供する」という訳語をよく使っています。
そのほか、「もたらす」という訳語は非常に語呂がよく、「利点をもたらす」、「改善をもたらす」など、「もの」ではなく「こと」が対象となっている場合にぴったりです。
また、“provide support for …”などのような場合、“provide”を訳さずに“support”を動詞に品詞転換し、「…をsupportする」と訳すこともできます。
いずれにせよ、文脈に応じて最適と思われる訳語を選択するのが基本です。

サン・フレア アカデミーの翻訳の泉にも用例が載っているので、お時間があるときに目を通してみてください。
テキストにはsection、portion、memberが出現しますが、それぞれの違いがピンときません。
対象の大きさや形、仕組みによって意味内容が変わるのか、それとも決まった使い方があるのか分かりませんでした。
“place”や“part”も似たような意味の単語ですが、どのように使い分ければよいのかを教えてください。
辞書によれば、“section”は“a part that is cut off or separated”、“a distinct part or subdivisions of anything, as an object, country, community, class, or the like”、“one of several parts or pieces that fit with others to constitute a whole object”と定義されており、“portion”は“a part of any whole, either separated from or integrated with it”と定義されています。
どちらも同じような定義なので一概に言い切れませんが、“section”は(装置を構成する1つのモジュールのような)それを含む全体から明確に分かれる「区分」、「区画」などに相当し、“portion”は(例えば「先端部」のように)全体との物理的な区切りが比較的曖昧な「一部」、「部分」、「~部」などに相当するようです。
なお、“section”は「断面」の意味でもよく使用されます。
“part”は“portion”の類義語ですが、“section”の類義語でもあります。
“place”は「場所」、「空間」といった広い範囲を表すほか、“any part or spot in a body or surface”(体や物の表面の一部、箇所)、“a particular passage in a book or writing”(書物などの箇所、節)など、狭い部分を表す場合もあります。
“member”については、全体を構成する「一員」という意味のほかに、“An individual angle, beam, plate, or built piece intended to become an integral part of an assembled frame or structure”などと定義されるとおり「部材」を表すこともあります。あるいは、体の一部、数式の左辺・右辺、プログラミング言語の構造体を構成する「メンバ」など、分野と内容に応じて訳語も異なります。
いずれの語にも似通った意味があるので、訳し分けが困難なこともあるでしょう。上記を参考にしていただければと思います。
andの訳し方がよくわかりません。どのように考えたらよいですか?
“A, B, C and D”などのように名詞(名詞句)をつなぐ“and”は、基本的に「A、B、CおよびD」と訳しますが、次のような例外もあります。
①:例示列挙、例えば“such as A and B”や“for example A and B”については、A、Bそれぞれが簡単な語であれば、それぞれ「AやB」、「A、B等」と訳す方が自然です。
②:“relation of A and B”(AとBの関係)、“sum of A and B(AとBの和)”のように、AとBの結び付きが強い場合には、“and”を「と」と訳すのが適切です。
“(A and B) and (C and D)”のような入れ子構造もよくあります。例えば、“left and right edges and top and bottom surfaces”については、“(left and right edges) and (top and bottom surfaces)”の組合せと分かります。このように、“and”が入れ子構造になっている場合、訳文では「および」<「ならびに」という階層関係を用いることができます。具体的にいうと、標準階層では「および」、それよりも大きな単位を接続するときに「ならびに」を用いるということです。したがって、上記の例は「左端部および右端部、ならびに上面および底面」と訳すことができます。
また、andで接続される各要素が複雑で長い構造になっている場合には、「Aと、Bと、Cと、Dと」のように、各要素に「~と」を補うことによって、要素の切れ目を明確に表すことができます。
この顕著な例が、特許請求の範囲で多用される「ト書き」です。例えば1つの請求項が数ページに及ぶ場合、文章も複雑なので、「ト書き」で各要素の範囲を明確にすれば、文意を誤解されることもありません。なお、「ト書き」の場合、最終列挙要素は「~とを」で終えます。ただし、動名詞句を「~することと、~することと、~することとを」と「ト書き」すると文章としての美的感覚が失われてしまうので、「~すること、~すること、および~すること」のように「および」で接続しましょう。
“and”、“or”については、翻訳の泉第14回に詳しく掲載されています。ぜひ読んでみてください。
特許の文はとても長く、何を言っているのか途中で分からなくなることがあります。
また、和訳する際には、どこに句読点を付ければいいか悩みます。句読点を付ける際のポイントを教えてください。
特許明細書固有のルールはありません。 読み手に誤解を与えないことが重要であり、英文のカンマと位置を合わせる必要はありません。
読みやすく、係り受けがはっきりした訳文になるように、(日本語としておかしくない形で)読点を効果的に利用してください。
例えば「Aおよび、B」、ではなく、「A、およびB」が日本語としておかしくない形です。
そのほか、1行未満の短い文でない限り、主語の後に読点を打った方が一般的には読みやすくなります。
なお、朝日新聞社刊「日本語の作文技術」(本多勝一著)には、読点の打ち方を含めて基本的な文章作法が解説されているので、ご紹介しておきます。
同じ動詞が続くと単調な訳文になるのですが、繰り返しは避けた方がよいですか。
それともあまり気にする必要はないのでしょうか。
特許翻訳では原文に忠実な訳出が求められます。原文の内容は、省略せずにすべて訳しましょう。
動詞の繰返しを気にする必要はありません。
特許翻訳に必要とされる物理知識やIT知識を維持・増強する上で効果的な勉強方法、雑誌、本などを教えてください。
私自身、技術職に従事していましたが、一念発起して翻訳者に転向した者です。前職では、(外資系だったこともあり)社内用語はカタカナ読みが概ね通用していたため、翻訳の勉強を開始して早々、専門用語に手こずったことを思い出します。
実務では馴染みがない分野の仕事を請け負うことが多く、その都度調査を進めるうちに知識・訳語が少しずつ増えていくので、それほど気負う必要はありません。
ただし、普段から各種分野に親しんでおけば能率が向上するので、新技術に触れる機会を増やすように心掛けるとよいでしょう。
ちなみに高額な勉強法には事欠かないでしょうが、投資ばかり増えても仕方がありません。
あまりお金をかけずに勉強するには、業界紙に目を通す(私の場合、日経BP社の雑誌などを定期購読しています)、Webの技術解説コラムを読む、図書館の雑誌コーナーを利用するといった方法があります。
そのほか、展示会(入場無料ということもよくあります)や展示会併設のセミナーに参加する、プログラミングに挑戦する(プログラミングの素養がない場合)、家電量販店で製品を触るなど、実際に経験してみるのもよいでしょう。
文面や写真でしか知らない物の大きさや働きをじかに見ることは極めて有意義です。
興味がある技術の特許文献のうち、和文と英文の両方があるものを比べながら読んでみるといった手段もあります。
常にアンテナを張って情報収集に努めれば、知識が広がることと思います。
翻訳する際は、テキストに記載されている用語・表現のほかに英辞郎を主に使っていますが、それでは足りないでしょうか?
お勧めのソースがあれば教えてください。
専門辞書を一度に揃えるのは難しいと思いますので、徐々に買い揃えていくことをお勧めします。
サン・フレア アカデミーでも、特選辞書の販売を行っていますので、参考にしてみてください。
専門辞書だけでは足りないため、インターネット上の用語集サイトを以下にご紹介します。
オンライン学術用語集
パトロインフォメーション
●その他のオンライン辞書サイト
 翻訳と辞書
 Dictionary of Dictionary
特許電子図書館
WIPOのサイト
欧州特許庁のサイト
検索方法については、各サイトのインストラクションに従ってください。
日英の両方を見較べて勉強したいのですが、同じ内容の特許を英語と日本語の両方で閲覧する方法はありますか。
特許庁の電子図書館を検索するなどしてみましたが、見つかりませんでした。
同一特許を英語と日本語の両方で閲覧するには、欧州特許庁提供の特許検索データベース(esp@cenet)を利用するという方法があります。
同ページの左側の“Number Search”をクリックし、“Select patent database”が“Worldwide”になっていることを確認してから、“Publication number”テキストボックスに検索したい文献番号を入力します。
例えば、特開2004-095636が他国で出願/公開されているかどうかを知りたい場合には、“Publication number”テキストボックスに“JP2004095636”と入力します(先頭に国コードJPを付し、ハイフンを除きます)。
さらに、“Including family”チェックボックスにチェックした後、“Search”ボタンをクリックすると、特開2004-095636のパテントファミリー一覧が表示されます。 パテントファミリー内にUSで始まる文献番号があれば、それが対応する英文になります。
特許が申請されている物品などの図が記載されていますが、図と英文による説明が結び付きません。
このような文章に不慣れなのですが、翻訳の訓練を積めば慣れていくものなのでしょうか?
すべての明細書に図面が添付されているとは限りませんし、明細書で説明されている部分が図では省略されているか、非常に簡略化されているなど、さまざまなケースがあります。
したがって、図面に頼れない場合もあり、その場合には原文だけで内容を理解しなければならないこと、明細書全体を通読する、他の手段で調査するといった努力をしても分からない箇所が残った場合の最終的な頼りは文法ということを理解しましょう。
例えば、課題の答えと照らし合わせると意味が分かるという場合は、ご自身の訳文と解答例の違いを見比べて、理解できなかった理由と誤解してた理由を突き詰めていくとよいでしょう。
原文の内容をスケッチし、頭の中を整理しながら翻訳してみるのも1つの方法です。原文に記載されていることがすべてなので、原文解釈力を養わなければなりません。
もちろん、図面があれば原文解釈上の大きなヒントとなり、誤訳の防止に役立つことさえあります。原文の理解を助けるために、図中の記載内容を丁寧に確認してください。符号に限らず、角度、長さ、幅、奥行きなどが記載されている場合もありますし、相対的な大きさなどがヒントになる場合もあります(ただし、図の縮尺が一定でないときは必ずしも助けになりません)。
ちなみに平面図であれば簡単に理解できますが、立体図については空間把握力も要求されます。したがって、図面を読み取る力も養うように努めましょう。どこから眺めている図面なのか(正面と背面のどちらから眺めているのか、上面、底面、断面、角方向など)を把握し、自分なりにスケッチしたり、色を塗り分けてみるといった方法で理解が深まると思います。
外来語をそのままカタカナで表記する場合(スペース、キャビネットなど)と、漢語で表記する場合があるようですが、どちらにすべきか基準はあるのでしょうか?
基本的には、漢語表現が自然な場合はなるべく漢語にするとよいでしょう。
例として挙げていただいた「スペース」は「空間」としても自然ですし、特に不都合がなければ「空間」とすべきです。
なお、機械分野では漢語表現を優先するように顧客から指示されることがあるのに対し、コンピュータや電気の分野ではカタカナ表記を使用する傾向が強いようです。
例えば、“window manager”は「ウィンドウマネージャ」としか訳せませんが、同じ“window”でもスペクトル分析などに用いられる“window function”は「窓関数」とするのが一般的です(「ウィンドウ関数」と訳されることもあります)。
まずは、該当する分野・業界で定訳を調べ、定訳があれば採用してください。漢語とカタカナの2とおりが定訳という可能性がある場合には、どちらの使用頻度が高いのかをGoogle検索などで確認してから訳語を選択すればよいでしょう。
定訳がない場合には、カタカナ表記の直後にスペルアウトするという手段もあります。
日本語で同じ単語が繰り返し使用されている場合、英訳するときは、いろいろ言い換えますが、逆に英語で同じ単語が繰り返し使用されている場合、和訳するときに訳語をあれこれ変えた方がよいのでしょうか?
著者は自由に単語を選べますが、翻訳者はそういうわけにいきません。
翻訳者は、原文内容の加筆や省略をしてはならず、記載されているとおり訳す必要があります。
1つの明細書において同じ意味で用いられている単語には、同じ訳語を一貫して適用しましょう。
セミコロンの使い方をご教示ください。
セミコロンは、カンマを含む句や節の区切りを明確にするために使用されることがあります。
【例】テキストP-28 課題3
“U.S. Pat. No. 1,895,535, issued Jan. 31, 1933 to G.F. Brecht; U.S. Pat. No. 3,182,809, issued May 11, 1965 to E.N. Getoor; and U.S. Pat. No. 4,779,742, issued Oct. 25, 1988 to K.T. Starkweather et al.”
また、ピリオドとカンマの中間の働きをする場合もありますが、これは文と文の間にピリオドで区切るよりも強い結び付きがあることを意味しています。
Whereinの訳し方がいまひとつ分かりません。
簡単な例を挙げて説明していただけないでしょうか。
“wherein”は“in which”と同義です。
例えば、“The method of claims 1 wherein the constant is one.”とあれば、“The method of claims 1 in which the constant is one.”と読み替えて、「定数が1である請求項1に記載の方法」と訳せるでしょう。
“A XXX device wherein the register comprises a plurality of bits.”とあれば、同様に、「レジスタが複数のビットを有するXXXデバイス」などと訳すことができます。
これらの例では“wherein”以降が短いので、先行詞に係るように訳すことが可能です。
“wherein”以降が長い場合には、テキストP-63に記載されているように、“wherein”の前でいったん「~であって」と区切ってからその後を続けると訳しやすく、読み手にとっても分かりやすくなります。
方法のクレームで「ステップであり、」などを組み入れるポイントがありましたが、詳しく教えてください。
「~であって」は、テキストP-63に記載されているように、“… wherein, xxx is …”のように“wherein”で切れる箇所、または“…, said xxx …ing …”のように分詞構文をとる箇所に置くと、長い文章でも訳しやすくなります。
例えば、“A step for XXXing, said step comprising AAAing, BBBing, CCCing, DDDing and EEEing.”については、「XXXをするステップであって、AAAをするステップと、BBBをするステップと、CCCをするステップと、DDDをするステップと、EEEをするステップとを含むステップ。」と訳すことができます。
“said step comprising”以降を”A step for XXXing”に係るように訳すことも可能ですが、“AAAing”、”BBBing”などが複雑で長い場合には、そのように訳すことが困難ですし、読み手に誤解を与えかねません。
クレームを訳す際に、段落を「・・・と」で次につなげる場合や、「・・・であり、」と訳す場合の違いなどありますか?
「~と」は、クレーム中で列挙される各要素の区切りに置きます。
例えば、“A step for XXXing, said step comprising AAAing, BBBing, CCCing, DDDing and EEEing.”とある場合、“AAAing, BBBing, CCCing, DDDing and EEEing”はそれぞれ、“A step for XXXing”に含まれる要素ですから、「XXXをするステップであって、AAAをするステップと、BBBをするステップと、CCCをするステップと、DDDをするステップと、EEEをするステップとを含むステップ。」のように、列挙要素を「と」(最終要素は「とを」)で接続します。
テキストP-64の例題1では、(a)~(i)が“A videotape recording and play back system”の構成要素となっているので、(a)~(i)の各文末は「~と」(最終要素は「~とを」)で終えています。
(b)には“said video signal including …”という分詞構文が含まれているので、P-65の訳例では分詞構文の直前に「~であって」を置いているわけです(この部分は先行詞に係るように訳すことも可能で、P-65の一番下に例が記載されています)。
以上のような視点でテキストの原文と訳例とを見比べるとお分かりいただけると思います。
現在のレベルで基礎コースに進んでいいものかどうか悩んでいます。
基礎に入る前に読むべき参考書などありましたら、アドバイスをお願いします。
特許明細書は堅苦しく複雑な書き方なので、初めは分からなくて当然です。
「はじめての特許翻訳」は、特許に関する知識をお持ちでない方と特許明細書の翻訳を初めて手がける方を対象としています。
この講座を通じて特許明細書とはどのようなものかをつかんでいただけたならば、次のコースに進む資質は十分かと思います。
翻訳の実力は一朝一夕に養われるものではなく、学習を続けることで徐々に身に付いていきます。
なお、文法解釈に苦労されているのでしたら、文法書を常備することをお勧めします。
最終的に頼るべきは文法なので、文法を総ざらいするのもよいでしょう。
技術文書での一般的な表記方法について。
実際に手に持っている場合は「持つ」と表記し、そうでない場合は「もつ」と表記するといった規則を詳しく知りたいのですが、何か参考になる本はありますか?
用字用語辞典などを手元に置いておくとよいでしょう。
また、用語用字に関する興味深いサイトを見つけましたので、併せてご紹介しておきます。
左側の「用語用字のポイント その4」の「異字同訓語の補足」から、「もつ」と「持つ」の使い分けについて参照することができます。
また、ページの下に参考文献として用字用語事典なども挙げられています。
日本語訳で漢数字を使用してもよいのでしょうか。
科学技術文献などの場合、成語以外にはアラビア数字を使用するのが一般的です(「第1の」、「2倍」、「3つ」など)。「一時的」、「択一的」など、他の数字で置き換えることができない場合(つまり「二時的」、「択三的」という語があり得ない場合)には、漢字を使用しなければなりません。
態の変換について。英文の受動態が日本語訳では能動態になっていることがあります。
どのような基準で態を変換すればよいのですか。日本語として分かりやすくなればよいのでしょうか。
受動態で書かれている英文は、その内容が筆者やオペレータの行為・意図によるものであれば能動形で訳し、筆者やオペレータの行為・意図によるものではない場合(結果や状態を表す本来の受身)は、書かれているとおり受動形で訳すと自然な訳文に仕上がります。
しかし、実際には、どちらで訳してもよい場合も沢山あります。判断に迷ったら、まずは原文どおりの態で訳し、日本語として不自然なら態を変換してみるとよいでしょう。
なお、顧客によっては、不要な態の変換をしないように指示される場合がありますので、実務の際には注意が必要です。

【例文1】
To a solution of 45 g of 3,4,5-trimethoxy-benzaldehyde in 1.2 L of IPA, there was added 125 g of nitropropane and 67.5 g of t-butyl-ammonium acetate and the reaction mixture was held at reflux for 16 h. This was poured into 6 L of H2O, and extracted with 2x250 mL of hexane.
上記のように実験の手順や結果を報告する場合、一般的には受動形で書きます。その目的は、実験者ではなく意味上の主語に焦点を当てることと、客観的な文章を書くことにあります。同じ内容を日本語で表現する場合に受動形を用いる人はまずいないので、能動形で訳すということになります。
【訳例1】
3, 4,5-トリメトキシベンズアルデヒド45gをIPA 1.2lに溶かした溶液にニトロプロパン125gと酢酸t-ブチルアンモニウム67.5gを加え、反応混合物を16時間還流した。これを水6l中に注ぎ、250mlのヘキサンで2回抽出した

【例文2】
In some machines the arguments are fetched from main memory and the result is returned to main memory.
【訳例2】
機種によっては、引数が主メモリから取り出され、結果が主メモリに戻される
「(発明者名は、)通常は検索の便宜上、言語のスペルをそのまま訳文に記載します。」とテキストにありますが、「翻訳の泉」の「その9 固有名」には「人名などの固有名詞もポピュラーでない場合は音訳を付けること」と記載されています。
人名を訳す場合、「言語のスペルのみ記載する」と「日本語も併記する」のいずれが正しいのでしょうか。
人名を訳す上で気を付けるべき点がありましたら併せて教えてください。
特許翻訳では、テキストP-24に記載のとおり、人名は翻訳せずに原語どおり記載するのが一般的です。
人名を音訳して直後にスペルアウトするようにと顧客から指示される場合もありますが、まれなケースだと思います。
そのように指示された場合には、読み方がはっきりしない人名もあるので、「~と音訳しました」のようにコメントを残すとよいでしょう。
課題の訳文のを入力時に、文字数の関係で「ー」(長音)や「ュ」(拗音)が行頭になったり、二桁の数字のうち、十の位の数字と一の位の数字の間で改行されてしまうことがありました。
このような入力は避けるべきか否か教えてください。
(他の翻訳会社については分からないのですが)サン・フレアの場合、翻訳の段階では懸念されているような制約はありません。
反対に、訳者が敢えて文字数やサイズを調整をしたために後工程に影響する可能性もあります。
取引先の翻訳会社や特許事務所に確認するのがよいでしょう。
例題等と比べると、私の訳は口語的で柔らかいと感じます。
特許翻訳に適した訳文を作成するには、どうすればよいのでしょうか?
特許明細書は難解な文章になりがちで、その傾向は日本の明細書を読んだときに特に顕著です。
しかし、特許翻訳では意図的に堅い文章を書く必要はありません。
肝心なのは、原文に忠実で誤解を生じない明快な訳文を作成することです。
特許庁電子図書館などを活用しながら、特許明細書に触れる機会を増やせば、文体にも慣れ、翻訳の質がさらに向上するでしょう。
特許の訳し方は独特ですが、基本的に直訳に徹すべきなのでしょうか?
原文の主語は訳文でも主語にすべきかなど、どの程度まで直訳すべきか判断に迷っています。
特許翻訳では、「可能な限り原文に忠実に、かつ日本語として不自然にならないように訳す」ことが期待されます(ただし、「原文に忠実に」とは「語順や文章の構造を原文と瓜二つにする」という意味ではありません。
「原文の内容を過不足なく訳す」という意味です)。
したがって、英文の主語を和文の主語としても不自然でない場合には、基本的に主語として訳します。

[例] The present invention provides an apparatus of …
 本発明は~の装置を提供する(ものである)
この例は直訳調でもおかしくありません。

[例] This method simplifies the process of …
 この方法により、~の工程が簡単になる
上記は他動詞文の例ですが、無生物主語をそのまま主語にして「この方法は、~の工程を簡単にする」と訳すのは不自然です。
「原文が透けて見える訳」などと言われるように、原文に執着しすぎたために不自然な日本語になっている訳文をよく見かけます。
意訳は最終手段と考え、まずは直訳してみて、日本語として不自然であれば、語順の変更、品詞の転換などの工夫を推敲の過程で試みてください。
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