サン・フレアに翻訳エディタとして入社して数年が経ちますが、入社前はいろいろな仕事を経験しました。ソフトウェアの品質保証、営業、教育、企画調査、出版等々、人事・経理と社長業以外の職種をひととおり経験しました。多種多様な人々と千変万化する状況の中での問題解決経験(問題発見だけでなく創造も含む)が非常に活きています。現場での経験が豊富なので、考える前に身体でわかる、それが大きいです。それに加え在学中も社会に出てからも常に勉強が趣味なので、どの案件の内容もお客様の気持ちもよくわかります。優秀な翻訳者になるためには、やはり社会経験が重要だと思います。一人の力ではどうにもならない状況の中、一筋縄ではいかない人間関係の狭間で切磋琢磨したり、もまれたり。倒れるまでやる、七転び八起き、せっぱつまった状況を切り抜けてきた過激体験が翻訳を行う上でも活きています。本を読んで得た知識など、自分で体験しないとしたらどれだけの意味や価値があるのでしょうか。
翻訳者に求められる必須資質には、2つあります。知能と努力です。言語は巨大なシステムです。字面を訳せば済むというような安直なものではありません。日本語は感性言語、英語は論理言語と対極にあります。翻訳はソース言語で内容を理解し、それをターゲット言語で書くという作業です。内容の理解には理解力や論理力などの知能が必須です。日本語力や英語力も必要ですが、内容を理解できないと翻訳は絶対不可能です。知能は高ければ高いほど良いです。ただし、専門性と英語力とは相関はないようです。
そして、調査力に代表される努力です。常にインプットし、わからないことは必ずわかるまで調査するという、あくなき追求心で、寝食を惜しんでの努力が不可欠です。四当五落(睡眠4時間なら合格、5時間なら不合格)の精神です(長年やると健康に悪影響)。勉強に終わりはなく、質に限界はなく、年齢は関係ありません。翻訳会社が受注する案件は、求められるレベルと分野範囲が広く、最先端の内容も多いので、新しいものを理解し、わかるまで調べ、どんな分野にも対応できるのが理想です。知能が高く努力をいとわなければ何でも可能です。
サン・フレアの品質を支えている他社との差別化要因の1つは、社内に品質保証部門があることです。訳文をチェックする専門家や仕上がり体裁をつくる専門家がいます。また、訳者にフィードバックを行っています。小さな会社や安い見積の会社では、これらがないか作業掛け持ちのためどうしても問題が出がちといわれているようです。
翻訳は、ある意味では芸術と同じで感性の問題、職人芸の世界です。技術は人から教えられるものではなく自分で磨いていくものです。偉人も天才も時空を超えた努力の積み重ねの結果です。100%理解する、できなかったら人の2倍も3倍も努力する、いい翻訳を見て真似る。人がすべてであり、人に始まり、人に終わります。いかに優れた人材を確保、維持し、人の能力を上げていくかにかかっています。
翻訳コストはほとんどが人件費で、機械翻訳はまだ夢物語です。安くするには限界があるので、どこかの会社が異常に安いとしたら「偽装」や「耐震偽造」を疑う必要があるかもしれません。事業ですから、品質、コスト、納期のバランスも大切です。
科学技術翻訳といっても、分野だけでも化学、生物、物理学、地学、工学、機械、電気・電子など多岐にわたり、1つの分野に限定されず複数の分野(化学と医薬、電子と医療など)にまたがったものが多くなっています。そのため、自分はこれしかできないという単分野主義の訳者は社会に通用しなくなりつつあります。また、扱うものも実に種々様々です。論文や科学文献、技術文書、データシート、専門書、報告書、法律文書、ホワイトペーパー、販促資料、ウェブページなどキリがありません。それにレベル的にも広大で、中には大学専門レベルのテキストを英米小学4年生レベルの英語で書いてほしいという無理難題もあります(もちろん、可能です)。まさに何でもありの青天井です。
翻訳者泣かせな案件が2種類あります。1つは、原文の英語または日本語が言語的におかしいか内容が非論理的または誤りが多いときです。ノンネイティブが母国語なまりで書いた英文や学校で作文訓練のない日本人の書いた意味不明な和文があります。そういった場合、ノンネイティブの母国語文法の見地から考えたり、内容の背景を調べて論理を展開したりして、こういうことをいいたいのだろうと考えて訳す必要があります。そのためにも、内容を体験で知っている、暗号解読のような論理力、わかるまで調べる能力が生きてきます。
もう1つは、日本人が英語で直接書いてそれを修正してほしいというものです。ある程度英語ができる人であればいいのですが、そうでないと和文原稿がないため暗号解読状態となり、非常な時間と労力を要し、金銭的にも精神的にも割に合わなくなることもあります。この解決策も上記と同じです。
また、いい品質のためには、お客様の品質に対する要求の理解が不可欠です。常にお客様の要望を第一に考え、単なる受発注の関係ではなく、お客様と一緒になって完成品をつくっていくという姿勢が今後ますます重要になってくると考えています。
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