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安田さん

金融・経済・IT分野においての翻訳の特徴を教えてください

「金融・経済」は、その分野に精通した読者にとって違和感のない適切な日本語を書くための下準備が特に重要な分野だと感じています。一口に金融・経済といっても、アナリスト・レポート、決算報告書、ニュースレターなど、文体はさまざまです。原稿を受け取った時点でその分野の質の高い日本語の文献を集めて集中的に目を通し、キーワードをハイライトするなどして頭をそのモードに切り替えてからとりかかるようにています。このように下地を作っておくことで、英文の解釈がスムーズになるだけでなく、対応する日本語の言い回しが浮かびやすくなるため、その分解釈に自信がない箇所の確認に時間をまわすことができます。
限られた時間内で効率よく作業するには、専門的な内容のものほどこの下準備が効果的なようです。

「IT」においては、単語自体は簡単なものの、定訳が複数あるというものが多いため、思い込みで訳してしまわないよう注意しています。例えばfunctionという単語などは1つの原稿内で「機能」と「関数」という2通りの意味で登場することがあります。また、ITでは、数百ページにおよぶマニュアルや膨大な量のUIを数人で訳すことがありますが、担当以外の部分についても概要をつかみ、全体像を把握しながら訳すように心がけています。
そうすることで、自分の担当する部分では一般的な意味で使われているように見えた用語が実は固有名詞だったなどというミスも減ります。このように、常に柔らかい頭で、直感を "信じずに" 読解することが重要だと思っています。

翻訳していて楽しいのは、さまざまなビジネスの現場で使われる最新の文章を目にすることができる点です。例えば、昨年のハリケーン・カトリーナ直後に依頼された保険業界に関するレポートなどは非常に興味深かったです。
また、文章をとことん読み解く機会が与えられることも魅力だと思います。いままでさらりと流し読みしていたような文章も、いざ翻訳するとなると案外解釈があいまいだったことに気付くことがあります。
手に負えないほど難しい内容だったらどうしようという不安もありますが、毎日が新たなチャレンジなので飽きることがありません。

原文を意識させないような訳に近づける

翻訳案件の内容等を教えてください

保険・銀行業界向けのITソリューションに関するニュースレターを中心に担当しています。また、金融系ではアナリスト・レポート、欧州の銀行のニュースレター、IR関連資料、ストックオプションに関する社内資料など幅広く担当しています。

IT系では、企業のITインフラ関連の製品やサービス(セキュリティー、ストレージ、データベース、分散環境の管理・監視)、業界別ソリューション(流通、製薬、通信など)のマニュアル、UI、パンフレット、ケース・スタディー、プレゼン資料などのお仕事がありました。

この他にもビジネス全般のものとして、業界トレンド・レポート、契約書、営業研修用資料、珍しいものとしてはアメリカの人気ドラマのあるシーンの台詞の翻訳もありました(字幕用ではなく、ある会社の販促物用でしたが)。

翻訳者になるまでの経緯を教えてください

小学校時代に5年間海外で過ごしたため、英語の基礎はこの時期に身に付きました。中学、高校は地元の学校に通い、大学であらためて英語を勉強しました。翻訳に役に立っているのは英米文学、英語での国際政治・経済学の授業などです。

安田さん卒業後に就職した総合商社では、調査部に配属されました。この部署は、社内の営業部門が営業活動において何かしら情報が必要となったときに問い合わせをしてくる部門でした。専用の書庫に常に最新の資料が揃っており、それに加えオンラインの情報源も充実していたため、翻訳に必要なリサーチ力を訓練するには最適な職場だったかもしれません。また、国際会議に出席する役員のサポートも部の主要業務であったため、現地の事務局との英語でのコレポン(メール、電話)や、会議でまとめられた英文レポートの翻訳なども任せられました。
仕事として翻訳をしたのはこの時が初めてでしたが、「この作業、かなり好きかも」と思ったのを覚えています。

そんな中、ビジネスの基本的な知識がないことをもどかしく思うことが多くなり、英語でビジネスの勉強をしたいと思い社会人向けのマーケティングに関するプログラムをみつけてアメリカに留学しました。
マーケティングを選んだのは、「お客様を知る努力を怠らないことがビジネスの発展につながる」というマーケティングの考え方が、ビジネスに限らずあらゆる人間関係にも当てはまると思い、「これはこれからの人生で絶対無駄にはならない」と感じたからです。
実際、マーケティング・リサーチの授業などでは心理学的な手法も学び、ますます興味を持つようになりました

帰国後はコンピューター・セキュリティー会社のマーケティング部門で新商品開発に携わりました。初めてのIT業界でしたので、最初は同僚の話の内容がほとんど理解できませんでしたが、良い上司に恵まれスパルタ的に色々と勉強させられました。展示会への出展や営業担当者との客先訪問など、週の半分ほどは外出があり、遅ればせながらビジネスの現場を知りました。商談での通訳も何度か経験しました。また、新商品を企画するにあたり、海外のものも含めた競合製品の市場調査が必要だったため、英語の文献に触れる機会も多かったです。

その後、結婚を機にアメリカに戻ることになり、以前から漠然と興味を持っていた翻訳の仕事を真剣に検討することになりました。渡米と同時に日本の翻訳学校の通信講座を受講し、トライアルを数社受け、現在に至ります。

翻訳のプロとしてのこだわりはありますか

在宅の翻訳者の場合、上司や同僚がいないため、仕事の仕方がマンネリ化しがちです。そのため、常に何か改善できることはないかを意識するようにしています。仕事中に不便に感じたり時間のロスになっていると感じることがあれば、メモをしておき、後でその解消方法を調べるようにしています。最初はPCや電子辞書など基本的な環境を整えることから始め、インターネットの情報源の整理や、多数の参考資料を効率よく検索する工夫など、少しずつ改善をしてきました。他の翻訳者さん達が工夫されていることをWebで調べることもあります。翻訳そのものに専念できるような環境作りを心がけています。

また、実際の翻訳作業においては、日本語として読みやすい文章になるよう文単位での見直しにとどまらず、流れを確認するようにしています。この点はまだ課題が多いのですが、サンフレア様は熱心にフィードバックをくださるので表現が適切でなかった箇所もすぐに確認できます。これからも良い文章をたくさん読み、原文を意識させないような訳に近づけるよう努力していきたいと思います。


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