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上級講座「法務・契約書」Q&A

通信科受講生から寄せられたご質問を紹介しています。
回答は、上級講座「法務・契約書」担当講師の、冨田敬士先生、日野慶宏先生です。

◆英文法については初級講座「はじめての翻訳文法」Q&A、契約書翻訳については中級講座「法務・契約書」Q&Aも参考になります。

“holders of shares”の訳語は「株式保有者」、“shareholders”は「株主」となっています。“holders of shares”を「株主」と訳してはいけないのでしょうか?
一般的には問題ありません。ただし、文脈によっては「保有者」と訳した方が適切なこともあります。たとえば株主以外の者が株式を所持している場合(受託者、質権者など)は「株式保有者」の方が適訳です。
agreeの訳語として「同意する」/「合意する」がありますが、使い分けに自信がありません。訳出する際の目安などはあるでしょうか?
いずれかの当事者が他方当事者の行為にagreeするなら「同意」、両当事者が互いにagreeするなら「合意」です。なお、mutually agreeや agree with each otherは「相互に同意する」ことなので、一語で「合意する」とも言い換えられます。
当事者が「甲」「乙」となっている和文を英訳する場合は、契約内容に応じて、“Buyer/Seller”、 “Licenser/Licensee”、 “ABC/XYZ”などと訳し分けます。
反対に、“Buyer/Seller”、“ABC/XYZ”となっている英文を和訳する際、「買主」「売主」、「ABC」「XYZ」ではなく、「甲」「乙」と訳すべき場合はあるでしょうか?そのほか、定義語を訳す際の注意点などがあれば教えてください。
通常は「買主」「売主」、「ABC」「XYZ」のように訳しますが、クライアントの要望に応じて「甲」「乙」と訳すこともあります)。
契約書において定義語が一般名詞としても使用される可能性があるときは、「本~」や「本件~」といった識別用の修飾語を定義語に付加するのがよいでしょう。
そのような識別用の修飾語は同一表現で、契約書全体で一貫して使用する必要があります。
“termination”には「解除」と「解約」という訳語がありますが、訳し分け方を教えてください。
相手当事者に契約違反があった場合、日本の法律用語に従って「解除」と訳すのが一般的です。しかし、日本法では契約違反ではないのに双方合意のうえで契約を解消する「合意解除」という制度も存在します。このように法制度の違いによって用語の概念も異なるため、完全な訳し分けが困難なことも往々にしてあります。「解除」と「解約」は異なりますが、「解除」を「解約」の意味で用いることもあるため、一般的には「解除」と訳しておけば問題ありません。
calendar monthという表現はa monthと意味が異なるのですか?契約書でよく使われる表現なのでしょうか? (Text 3)
monthは期間を示す言葉です。それが30日間なのか31日間なのかが問題になることもあるので、1日の違いが重要な場合には「月」を定義する必要があります。契約書ではcalendar monthとする箇所を単にmonthで表現していることもあります(例えば「前月」などの表現)。契約書でmonthはよく使用されます。
interestの訳語として、「権益」「利益」「利権」などがありますが、訳し分けの基準はありますか?
interestは、本来legally enforceable rightのことで、権利を意味します。たとえばsecurity interest(担保権)などです。ただし、「持分」とも訳されるとおり、利害関係を含意するので、法律文書では通常「権益」と訳すのが無難です。
「差し引く」の英訳についてですが、“subtract”と“deduct”では意味に違いがあるのでしょうか?
subtractは「ある数字からある数字を引く」という数学上の概念です。これに対して、一定の合計額から一定金額を取り去るという場合にはdeductを使用します。例えば「課税控除」をtax deductionと表現するなど、税務ではdeductが使用されます。
「(権利の)放棄」の訳語にはwaive、renounce、resignなどがありますが、どのような違いがあるのでしょうか?
waiveは、物に対する権利そのものを放棄することです。例えば「招集通知を受け取る権利を放棄する」をwaive the notice of the meetingというように、waiveに「権利」が既に含まれているのです。一番近いのはabandonですが、どちらかといえば物を放棄するという意味なので、waiveと同じようには使えません。 renounceは「断念する」という意味に近く、 「戦争を放棄する」といった場合に使いますが、権利の放棄という意味でも使用できます。ただし、法律用語としての「権利の放棄」にはwaiveが慣用的によく使用されます。resignは「辞職する」「辞任する」という意味で、概念が異なります。
the laws of the State of~(州の名前)を訳す場合、「~州法」と訳してしまってもよいのでしょうか。それとも「~州の法律」としておいた方がよいのでしょうか。
「~州の法律」は丁寧な表現ですが、「~州法」としても格別の問題はありません。たとえば、「日本法」や「米国法」というおなじみの表現は、その名称の法律が存在するということではなく、「日本国の法令」、「米国の法令」という包括的な意味で用いられています。州の場合も同様に考えてかまいません。
indemnify、warrant、guaranteeの違いを説明してください。
“indemnify”は「免責する」「損失を補償する」という意味で、ほかの2つとは明確に区別することができます。“warrant”は売買契約書などに頻出する語で、商品の性能を保証するときに使用されます。“guarantee”も同じく「保証する」という意味ですが、こちらは他人の債務や借金などを保証人の立場で保証するときに使用されます。ただし、商品の保証に“guarantee”が使われることもまれにあり、その意味での“guarantee”も一概に誤りとはいえません。
liabilityとresponsibilityにguaranteeとwarrantyのような違いはありますか。「法的責任」を意味する場合には、常にliabilityを用いた方がよいのでしょうか。
民事分野でのliabilityは、負債や損害について「法的な責任がある」ということで、一般的には一般英語のfinancial obligationの意味で使用されます。これに対して、responsibilityは「~すべき責任がある」「~に答える責任がある」といった広い意味があります。それぞれ文脈に応じて使い分ける必要があります。
in accordance with、under、pursuant toは「~に従って」の意味で使用されますが、用途の違いはありますか?
“under”の前置詞句(rights under this Agreementなど)は通常、形容詞の働きをします。それ以外の2つの前置詞句は通常、副詞の働きをします。
agreement、conditions、lawといった語の前に前置詞underが置かれた場合、「~に基づいて」、「~の下で」、「~に従って」などと訳しますが、どのような基準で訳し分ければよいのでしょうか?
文脈から最適と思われる訳を当てるという方針でよいと思います。訳文の趣旨に誤りがなければ、多少の語感のずれは許容範囲と考えます。ただし、underの前置詞句は形容詞的に用いるのが普通です。
「~に関して」の訳語の1つとしてwith respect toがありますが、どのような場合に使用するのでしょうか? 「in connection with」や「with regard to」ではなく「respect」を選択する理由を教えてください。
with respect toとwith regard toはconcerningと同じ意味ですが、それよりもフォーマルな表現です。with respect toとwith regard toの用途はほとんど同じです。in connection withは「~に関連する理由で」というニュアンスですが、区別なく使用されている例が多いようです。
transfer、assign、dispose of、deliver、grantなど、「譲渡する」という意味の単語がいろいろ出てきますが、どのように使い分けられているのですか?
transfer、assignはほぼ同じような意味で、主として「権利」や「義務」の譲渡に使用されます。dispose ofは「処分する」と訳しますが、売却や譲渡を含めた広い意味で使用されます。grantはライセンスや権利の譲渡に使用されるもので、動産や不動産の譲渡に使用することはできません。
証拠や書類を「提出する」という場合の動詞にはprovide、file、submitのどれを使ってもよいのでしょうか。使い分ける必要があるかどうかを教えてください。
fileは一般的に官庁など公の団体に提出する場合に使用されます(たとえば特許出願ならfile an application with the Japanese Patent Officeです)。公の機関や権限を有する相手に提出される場合、submitもよく使用されます。そのほか、deliverも「提出する」という意味で使用されます。
shallとwillの訳し分けについて。手持ちの参考書を見ると、一般的にshallは義務、強制、未来の約束を表す(「~しなければならない」「~するものとする」「~する」)のに対し、willは「shallよりも柔らかい義務」「単なる期待」を表現するとあります。両者をどのように訳し分ければよいのでしょうか。また、英訳の場合、shall、willのいずれを付けるべきなのか、それとも助動詞を付けない原形を使用すべきなのか迷ってしまいます。適切に使い分けるコツはありますか?文脈からその都度判断すべきでしょうか?
willが「shallよりも弱い義務」「単なる期待」、という説明は、法律分野については必ずしも正確とはいえません。willは「決意の宣言」あるいは「約束」を示すといった解釈もあります。いずれにしてもshallと同じように義務を表しています。契約書では、主語がライセンサーや保険会社の場合にwillを使用し、相手方の義務にはshallを使用するケースが多いようです。通常は「~する」と訳せばよいでしょう。
「とき」「など」「すべて」等には平仮名が使用されていることが多いようですが、何か特別な意味がありますか?漢字を使用しても問題ないのでしょうか?
「漢字が本来の意味を失った形で使用されるときは平仮名で使用する」のが一般的な原則です。ちなみに法律分野の文章は漢語表現が多用されるので、漢字ばかりで読みにくくなることがあります。用字用語辞典を参考にして、漢字の使用は抑えた方がよいでしょう。ただし、日本語には正書法がないので、どのような場合に漢字を使用する/しないかに関する共通のルールは存在しません。翻訳部門やドキュメント部門を持つ会社によっては独自のルールを決めていることもあるようです。なお、法律用語の「時」と「とき」は表記のみならず意味も異なるので注意しましょう。
「“discuss” は他動詞なので直接目的語を伴う」とありますが、他にも法律文書で頻出する動詞のうち、他動詞として使用されるもの(=用法を間違えやすいもの)はあるでしょうか?(テキスト1-29)
法律英語でおなじみのprovideは、自動詞と他動詞のどちらでも使用されます。他動詞で使用されるときは「提出する」「提供する」「規定する」といった意味ですが、自動詞のprovide forという表現は使い方を間違いやすいため、一般の辞典で用法を確認しておきましょう。
“contingencies for the benefit of the Buyer (Seller)”(買主(売主)のために記載された不確定事項)とは、具体的にはどういったことを指すのでしょうか?
これは主として第7条(Closing Documents)に規定されたそれぞれの義務(例えば譲渡証書の交付や残金の預託)を指していると考えられます。つまり、権原の移転手続きを完了するには各当事者が義務を履行する必要がありますが、履行されるかどうかはクロージングまで不確定なので、contingenciesと表現することができます。
certified check of the Buyer」「bank treasure’s check」がそれぞれ「買主の銀行保証小切手」、「銀行小切手」と訳されていますが、この2つの小切手にはどのような違いがあるのですか?
「certified check of the Buyer」は、買主の振出小切手の支払い原資となる資金が買主の銀行口座に積み置かれたことを銀行が証明した小切手のことです。支払いが確実なので、買主が振り出しただけの小切手よりも信用力がはるかに高くなります。一方、「bank treasure’s check」は銀行が振り出す小切手で、日本の「銀行小切手」に相当します。支払人が銀行なので、銀行が倒産しない限り支払いは保証されます。したがって、小切手の中では信用力が最高レベルといえます。
不動産取引上での仲介業者「broker」と斡旋業者「finder」にはどのような違いがあるのですか?
なかなか難しいご質問ですが、実務の世界ではどちらも同じような意味で使われます。細かくいえば、brokerは買主または売主の代理人となって取引を「仲介する人」を指します。これに対してfinderは文字どおり取引の目的物を見つけて仲介する人のことで、物を「見つける」ことに重点を置いた表現です。そのほかfinderは、「事実を認定する人」という意味で裁判官や陪審を指すこともあります。
“execute and deliver the Notes”(手形を作成し振り出す)についてですが、「作成」と「振り出し」の違いがよくわかりません。(ページ4-20 上から7行目) (IBCパブリッシングの「契約・法律用語英和辞典」では”execute and deliver to”が「作成・署名して~に引き渡す」「作成・署名し~に交付する」となっています。)
法律文書(契約書や有価証券)との関連で使用されるexecuteは、「署名して有効にする」という意味です。execute and deliver the Notesを説明的に訳すと「手形に署名して有効にし、それを相手に交付する」ということです。法律文書に署名して有効にすることを日本では「作成」ともいうので、「手形を作成し振り出す」としたわけです。「振り出す」には当然「作成」の意味も含まれているので、execute and deliverを「振り出す」と訳しても問題ないでしょう。 「作成・署名し~に交付する」は日本での契約書の有効要件として表現される文言ですが、この場合の「作成」はprepareの意味です。辞典の訳語は一般的には妥当な表現ですが、文書によって適切にmodifyする必要があります。
“obligation”一語だけで「債権債務関係」と訳せるのですか?それともその後に続く“by”と“with”を伴ってその両方となるのでしょうか?
債務は負担者からは確かに債務ですが、相手方からは債権となります。この両方の立場をカバーする訳として「債権債務関係」は適切な訳語です。この場合のbyは後に続く動作の主体を強調した表現、withは行為の相手方を示す前置詞です。日本語では特に訳し分けの必要はないものの、英文の法律文書では、あらゆる事態を想定して漏れがないようにby or withをセットとして使用することが少なくありません。文語的な表現です。
“Directors Meeting”、“Auditor”、“Company”など、定款や議事録で普通名詞を大文字で表すことがあります。特定の取締役、取締役会、会社などを指すときに使えばよいのでしょうか?
大文字は強調を意味します。上記の語はいずれも特定の会社の役職などを指しているので、固有名詞のように取扱うという趣旨もあります。このような大文字表現は定款のほか、合弁事業契約の会社組織に関する規定などで多く見られます。英訳するときは、同様の英文に合わせるか、発注者の意向に従って訳すことになります。
“a product developed, distributed, or sold by the Applications Business”が重複しており、同じことが2回書かれていますが、不自然な印象を受けます。1回の提示で済ませられなかったのでしょうか。(TEXT 6 6-26上から3行目)
この部分はboth in products developed, distributed, or soldなどと表現すれば、ご指摘のとおり1回でわかるとは思いますが、これは事業部門の違いを明確にする工夫と思われます。法律英語としては不自然な表現ではありません。
「~に規定された○○」、「○○は~に規定されている」という意味で、set forth、やprovidedがよく使われますが、その前にas が付く場合と付かない場合があるようです。どちらでもよいのか、それとも何か違いがあるのでしょうか?
大変よいご質問です。結論としてはどちらでもかまいません。asが限定用法で使用される場合、asは付かないのが口語的です。asを付けるのは文語的な表現で、法律分野ではよく使用されます。
「~ことが判明した場合には」の訳例がShould it be found thatとなっています。このShould itは、In the event やIn caseとどのように異なるのでしょうか?(Section3 国際物品売買契約書 P.1-26)
条件節のShouldは、基本的にIn the eventやifと変わりませんが、一般的に発生の蓋然性が低い場合に使われます。「万一…」という意味で、一般英語では感情的な表現といわれています。契約書でShouldを使わなければならない状況はほとんどないわけで、多くはIn the eventやifと置き換えることが可能です。
whichで始まる修飾文の前にコンマが付いているときと付いていないときの訳し方は異なりますか?また、whichで始まる修飾文が直前の言葉と複数の言葉のどちらに係っているのかわかりにくいことがよくあります。見分けるコツがあったら教えてください。
whichで始まる修飾文の前にコンマがあるかないかは、文法的には「限定用法」「非限定用法」と区別されています。概念は異なりますが、翻訳する際はある程度柔軟に考えてよいでしょう。先行詞は通常、関係代名詞の直前に置かれますが、そうでない場合は意味の流れと経験から判断する必要があります。
コンマの打ち方のルールがあれば教えてください。“include but not limited”等の後ろに列挙される事例と、日本語でいうカギカッコのような使い方は分かるのですが、その他に決まりごとはありますか?
include but not limitedのbut not limitedは挿入句なので、前後にコンマが必要です。英文では標準書式が確立しているので、コンマの打ち方は概ね決まっています。下記の書籍が参考になるでしょう。 “The Elements of Style”, Fourth Edition, by Strunk and White
: (コロン)や;(セミコロン)の訳し方を教えてください。また、2つの違いは何ですか?
コロンは次に語句や文章が列挙されるときに使用します(例えば箇条書きなど)。セミコロンはコンマとピリオドの中間です。つまり、「2つの文が相互に関連性を持つためピリオドで切るわけにはいかないけれども、コンマで続けるほどの密接な関連性を持たない」という場合に使います。
和文での当事者が「甲」、「乙」、「丙」となっている場合、どのように英訳すればよいのでしょうか。和文での表記にこだわらず、(例えばテキスト5に紹介されているような)表現や社名を省略したものを用いればよいのでしょうか。
欧米では社名の略称(例えばMicrosoft CorporationであればMicrosoft)などを使用するのが一般的です。ただし、これは翻訳者の段階で決められないので、Party A、Party Bなどと英訳しておけば、クライアントが適宜修正するはずです。
契約書の定義語(頭文字が大文字になっている用語)についてですが、本~または本件~と訳すこともあれば、「」を付けて訳す場合や、特に区別して訳さない場合も目にします。決まりごとや注意点はあるのでしょうか。
特に決まった表記規則はありませんが、一般的には「本~」という表記が一番簡単であり、それで大半は間に合います。定義語が極端に多い長文の契約書などでは、何も付けていないケースもよくあります。いずれにしても、最初から最後まで表記を統一することが重要です。
カッコ( )の使い方がよくわかりません。原文にカッコがない場合、どのようにカッコを使用すれば分かりやすい和文に訳せるのでしょうか?原文にないものを加えることに抵抗があるのですが。カッコの要不要は翻訳者が経験に基づき判断するしかないのでしょうか。
そのとおりです。英文と和文は発想が異なるので、英文の表現をなぞって訳すと冗長になったり、語句の修飾関係が不明瞭になったりすることが往々にしてあります。カッコの乱用は望ましいことではありませんが、カッコを使用した方が正確・明瞭に表現できるときは使ってもよいでしょう。
1文の中で(i)、(ii)、(iii)などが使用されているとき、これらを箇条書きにするのは誤りでしょうか?
(i)、(ii)、(iii)などは改行して箇条書きにしても結構ですが、文章の構成が原文と異なるのが難点です。箇条書きにしなくてもわかるようなときは文中に含めるのがよいでしょう。
比較的小さな数を含んでいる表現(2 years/two years)(10 times/ten times )などは数字で表すべきなのでしょうか。それともスペルアウトする必要がありますか?数字の後にくる名詞によっても異なるのでしょうか?
英語の正書法によると、通常の文章では9までは文字で、10からは算用数字で書くことになっています(ただし、10はどちらでもかまいません)。一般的に、契約書や法律条文では、数の大きさに関係なくスペルアウトして算用数字をカッコ内に書き添えます。これは数字の改ざんを防止するためです。ただし、数表などでは、スペースの関係と読みやすさに配慮してすべて数字で書くのが普通です。
契約書や定款に用いられる数字の表記方法についての質問です。日数や人数を示す数字をスペルアウトする場合は小文字から始まる表記が一般的だと思います。金額をスペルアウトする場合は、頭文字を大文字にする場合が多いようですが、頭文字も小文字というケースも見かけます。どちらであっても、統一さえされていれば構わないのでしょうか。
数字は小文字に統一してください。ただし、強調する目的であれば、頭文字だけでなくすべてを大文字で表記した方が、誤解がなくてよいでしょう。
技術翻訳では「以上」(... or more、 equal to or more than ...)と「超」(more than ...)、「以下」(... or less、equal to or less than ...)と「未満」(less than ...)とを厳密に区別しています。法律翻訳で“more than fifty percent (50%)を「50%以上」と訳した例を見たことがありますが、分野によっては日本語としての語感を優先することが許容されるのでしょうか?
合弁事業の持株比率や議決権の割合については、例えば50%を超えるかどうかは大きな違いなので、厳密に訳すべきでしょう。契約書をはじめとした法律文書は正確さが重視されるので、日本語としての語感を優先する必要はないと考えます。
英訳の際、thereunderとhereunderの使い分けがよくわかりません。
there-words、here-wordsは古い英語なので、なるべく使用しない方がよいという意見がネイティブの間でも強いようです。ただし、法律条文や契約書では相変わらず多用されているので、ある程度は使用してもかまいませんが、意味が不明瞭になるようであれば、完全な文章として表現した方がよいでしょう。 なお、文脈にもよりますが、「本契約」という意味ではhereunderを使用し、同じ文の既出の文書その他を指すときにはthereunderを使用します。自信がなければunder this Agreementやunder +名詞で表現した方がよいでしょう。
英訳の際、定冠詞を使うべきかどうかで迷います。冠詞に関するよい学習方法はないでしょうか?
定冠詞を用いる基準は、基本的に「その名詞が特定されているかどうか」になります。誤解しやすいのは関係代名詞の制限用法での先行詞ですが、先行詞に定冠詞を付けるかどうかは関係節とは無関係で、先行詞が特定されているかどうかによって決まります。冠詞については市販の参考書などで学習してください。
法務・契約書分野の翻訳を学習するにあたって、「これだけは持っているべき」というお勧めの辞書や参考書を紹介してください。
万人にとって最良の辞書・辞典というものはありませんが、「用語辞典」は不可欠です。レベルに合ったものを使用し、実力の向上と共に買い換えるとよいでしょう。ただし、翻訳にはある程度体系的な知識が求められるので、辞典だけでなく、市販の各種専門書や実務書も必要です。
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