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英訳の基本Q&A

通信科受講生から寄せられたご質問を紹介しています。回答は、「英訳の基本」担当講師の、遠田和子先生です。

比較級で冠詞「the」を付けるべきかどうかの区別が難しいです(テキストP-15、課題1-A、1など)。
具体的な例を挙げて説明していただけますか?
下記の例をご覧ください。
A) She is most beautiful when she smiles. 彼女は微笑んでいるときが最も美しい。
B) She is the most beautiful girl in this room. 彼女はこの部屋の中で最も美しい女性だ。
  She is the most beautiful (girl) in this room.
   ⇒girlが省略されるときにもtheを付けます。
上記の例で明らかなとおり、Aは同じ人に言及しているのであって、他の人と比較しているわけではありません。
他の人や物と比較していない限りthe は不要です。 一方、Bは他者と比較しているので、最上級のtheを付ける必要があります。
前置詞の使い方についてお尋ねします。
「○○社の従業員」の訳として、“employees at/of ○○ Company”があります。
google検索すると“at”より、“of”の方が遥かに多くヒットしました。
表現的・文法的には、“at”と“of”のどちらの方が望ましいのでしょうか。
確かに難しいですね。結論から言うと、微妙なニュアンスの違いはあると思いますが(おそらく帰属感の違いでしょう)、下記のどれでもOKです。
  ・employees of ABC Inc.(所属・帰属のof)
  ・employees at ABC Univ.(会社についてはofも使いますが、大学についてはatとするのが一般的です)
  ・employees from ABC Inc.(どこか外部の組織に出かけていった場合など)
  ・ABC’s employees(所有・所属のイメージが最も強い)
  ・ABC employees
   ⇒前置詞や冠詞の悩みを解消するには、このように名詞を単純に列挙する形式がお勧めです
    (実務英語や技術英語では4~5個の名詞を列挙することは許容されています)。
可算と不可算について、よく迷うことがあります(例えば「people were」や「 advice is」のように不可算名詞の後につくbe動詞は単数か複数か、など)。判断をする決定的な違いはありますか?
日本語と英語の違い(また、その言語を話す人々が世界をどのように認識しているかの違い)に関わるご質問ですね。
正直に申し上げると、「判断の基準となる決定的な違い」は数行や数ページで回答しきれないテーマです。
もし時間があれば以下の本を読んでみてください。冠詞と単数形・複数形について素晴らしいinsightを私に与えてくれた本です。
『わかりやすい英語冠詞講義』石田秀雄著(大修館書店)
しかし、図書を推薦しただけでは申し訳ないのでご質問の具体例について述べたいと思います。

(1)people were
peopleは不可算名詞ではなく可算名詞で、大別すると以下の2つの使い方があります。
①「人々」を表す集合名詞(personsの代わりにも使われる)⇒単数扱いですが実は複数概念です。
  ・People say that ….
  ・Five people (=persons) were at the meeting
②「国民」「民族」⇒この場合は単数a people、複数peoples(複数の国民)両方の使い方があります。
  ・French people are known as a food-loving people.「フランス人(フランスの人々)は食を愛する国民として知られています。」
なお、familyも集合名詞ですが、単・複の判断は「どのようにfamilyを捉えているか」という話者の認識により変化します。
  ・A new family has moved in next door.⇒家族を1つのグループ(ユニット)として捉えています。
  ・A new family have moved in next door.⇒家族を複数の人々として捉えています。

(2)advice is
この場合は単数以外ありえません。adviceは常に不可算名詞として使われるからです。
  ・His advice is always useful.
ただし、以下の組み合わせではpiecesに呼応してbe動詞が複数形になります。
  ・A few pieces of advice are always welcome.
適切な訳語を探すのに苦労しています。 例えば、テキストp-78の例題5-4で、「証拠がふんだんにある」という表現がありますが、plenty of evidenceを思い浮かべました。
これも正しいとは思うのですが、ample evidenceという表現は、plenty等の用語を通してThesaurus等で探してみましたが、ampleにはたどり着きませんでした。
適切な訳語を探す場合、プロの翻訳者の方々はどのような工夫をされていますか。
ふさわしい形容詞を探すには、まずTEXTP-63にあるように活用辞書を調べます。たくさん載っていますよ。
あと、私がよくやるのがGoogle検索です。この場合なら、こんなキーワードにします。
  “there is * evidence”
そうすると「*(ワイルドカード)」に入ってくるのは形容詞だと考えられるので、いろいろな言葉が手にはいります。試してみてください。
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冠詞に関する弱点を強化できるような市販の推薦参考書を教えていただけますでしょうか。
私が愛用している冠詞の参考書でお勧めのものを書きます。

『わかりやすい英語冠詞講義』石田秀雄著(大修館書店)>
これはTEXTにも載せましたが、私が読んで目からうろこの体験をした冠詞の本です。
作者は認知言語学者で「言語により人間は世界を認知する」という視点から冠詞を考えています。
「a、theの使い方はこうである」というアプローチではなく、身の回りのモノを英語ではどう捕らえているか、という深いところで冠詞を論じています。
『英語のなかの複数と冠詞』小泉賢吉郎著(The Japan Times)>
上記の本と併用して読むとより理解が深まります。
『冠詞マスター教本』石井隆之著(ベレ出版)>
冠詞の使い方の非常に詳しい説明が載っていて、個々の使い方のレファレンスとして役に立ちます。
ただし、「木をみて森を見失う」恐れもあります。英語のネイティブの言語世界観(冠詞に深くかかわっています)を理解する、つまり「森を見る」ことが目的でしたら先述の2冊がお勧めです。
『英語の冠詞がわかる本』正保富三著(研究社)>
これも冠詞全般について述べた参考書です。
私は「公園の名前、駅名には冠詞がつくか、ホテルの場合は?」など、個々の使い方に迷ったとき本棚からさっと取り出して確かめるのに使っています。

冠詞については、「よく分からないのでなんとなくa, the、無冠詞を選んでいる」人が多いように思います。確かに使い方は難しいのですが、「冠詞を意識」することが理解への第一歩になります。意識するとちょっとした英文を読むときにも、「なぜここは無冠詞なのだろうか?なぜここにはtheが付くのだろうか?」という疑問がわき、それについて調べたり、考えたりすることで次第に使い方がわかってくるでしょう。
言い換えの例として、ある所では「three or more」と表現し、次に「more than two」と書くと、読者が混乱すると思うので、そのような場合は言い換えを避けた方がいいと思うのですが、実際プロの翻訳者は、このような言い換えは避けているのでしょうか?
Googleで調べてみても、どうやらこのケースの言い換えはしていない様子です。
私はこのような数字関連では言い換えはしません。おっしゃるとおり、混乱するからです。
また、「~以上」と言う表現には「equal to or more than」「not less than」もありますが私は使いません。
ほとんどの場合「XX or more」を使っています。これは私自身が間違えないため、そして語数が少ないからです。
数字は訳において「間違えてはいけない」のに「間違えやすい」ものです。間違えないこと、そして読者が理解しやすいことを最優先にします。
パーセンテージをはじめとする数量表現が苦手なのですが、有効な練習の仕方はありますか?
テキストP-87にもいくつか挙げましたが、『英語表現辞典』(メディア総合研究所)が手元にあるととても便利です。
私もこれを参考にすることが多いです(なかなか細かい表現を覚え切れません)。
“hardly”と“seldom”はどのように使い分けたらよいでしょうか?(テキストP-100 課題6-B)
hardlyとseldomの違いは、hardlyのほうが否定の意味が強いことです。
他の言葉で言い換えて単純にすると、hardly=almost notですが、seldom=not oftenという感じです。
このような類義語のニュアンスの違いは英英辞典を参考にしましょう。
seldom:Not often; infrequently or rarely. See Usage Note at rarely.
hardly:①Barely; just.②To almost no degree; almost not: I could hardly hear the speaker.
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数字の表記について質問です。
通常10までの数字が可算名詞につく時はスペルアウトし、11以上の場合はそのままですが、ひとつの文(in one sentence)の中に10までの数字と11以上の数字が両方出てくる場合、片方のみスペルアウトし、もう一方は数字のままなのでしょうか?
そのように理解して頂いてOKです。
【例1】
  ・Five students passed the test and three failed it.
  ・Five students passed the test and 11 failed it.
  ・Nine of the 15 students passed the test.
  ・Twenty-seven of the 40 students passed the test.
  ⇒この例文では、「文頭に数詞がくる場合は、数の大小にかかわらず、スペルアウトする」という規則のため「27」がスペルアウトされています。

【例2】
  ・Five students have a car in 1970 and 55 students in 2009.
この場合、数字の表記はOKですが、この文で感じる違和感は「時制」です。
1970は過去のことなので、hadであるべきで、2009は(今の段階では)まだ終わっていないのでwillやpredictedなど入らないと変な気がします。 ので下記のようにします。
  ・In our school, five students had a car in 1970, and the number will (is expected to) grow to 55 in 2009.
「人間は外界から直接、有機物を食物として摂取しなければならない」という課題文の訳し方が難しかったです。
副詞がふたつ以上ある文の場合、簡潔な英文を作成するにはどうすれば良いでしょうか?
副詞の位置は迷うことが多いと思います。基本的に「動詞+目的語」の間には入れられませんが、比較的自由に位置取りすることができます。
どこに入れるかの判断基準は
 ①日本語の順序と同じにする必要はなく、あくまで英語の文章としてのバランスを考える
 ②英語の副詞は、他の品詞の単語に比べ自由に位置を変えられる

例えば、下記の文では「3年間保管すること」が重要な情報です。
for three yearsを文末に入れると何にかかっているのかよく分からないので、例外的に他動詞retainとその目的語all recordsの間にfor three yearsをいれています(通常は、動詞+目的語の間に副詞を置くことはできません)。
  ◎Sponsors shall retain for three years all records pertaining to individual trainees, training plans,
    trainee evaluations, and agreements with third parties
  ×Sponsors shall retain all records pertaining to individual trainees, training plans, trainee evaluations,
    and agreements with third parties for three years.

※『英語なるほど!ライティング』(講師著書)に記載した“時の副詞”より抜粋します。少し詳しく書いてあるので指針になるかと思います。

●時と場所を表す副詞
英文法の参考書には、場所と時を表す副詞を両方使うとき<場所+時>の順番に並べると書いてあります。
しかし実際には、文脈や書き手が強調したい内容に応じて、順番を変えてかまいません。

◎基本の順序<場所+時>
ハロルド・ピンターは1930年にロンドンで生まれた。
Harold Pinter was born in London(場所) in 1930(時). ジョンは昨日の午後5時、事務所にいた。 
John was in his office(場所) at 5:00 pm(時) yesterday.

◎異なる順序
ウィリアム・ショックレーは1949年、ニュージャージーのベル研究所でトランジスタを発明した。
William Shockley invented the transistor in 1949(時) at Bell Laboratories in New Jersey(場所).
この例ではat Bell Laboratories in New Jerseyがin 1949より長いので、順序を逆にして文のバランスをよくしています。
下記のように、in 1949を文頭に置いてもかまいません。
In 1949, William Shockley invented the transistor at Bell Laboratories in New Jersey.

場所や時の副詞をどこに置こうかと迷ったら、修飾する動詞とのつながりに注目します。
先ほど説明したように、副詞(句)は、つながりの深い動詞の近くに置くと、文意が明解になります。

次は、不用意な副詞の位置取りにより、事実と異なる内容を伝える文になってしまう例です。

ショックレーは1956年、トランジスタの発明によりノーベル賞を受賞した。
Shockley won a Nobel Prize for inventing the transistor in 1956.(←inventingを修飾しているようにみえます)

in 1956の最も近くにある動詞はwonではなくinventなので、「1956年にトランジスタを発明した」という意味に誤解されます。
発明は1949年で、受賞は1956年です。下記のようにin 1956を、修飾する動詞wonの近くに移すと誤解はなくなります。
Shockley won a Nobel Prize in 1956 for inventing the transistor.

副詞に代表される修飾の言葉は、読者が自分の意図と異なる解釈をしないかどうか、注意深く修飾関係を見直す必要があります。
「自分ではそのつもり」で書いている文章では、上記のような間違いは発見しづらいものです。
時間に余裕があるときには、英文を書いてからしばらく時間を置き、フレッシュな頭で客観的に自分の文章を見直すことをお勧めします。
時間がたち気分が変わると、誤解を生みやすい表現や間違いを見つけやすくなります。
テキストP-115に、“柔軟に発送を転換し、原文の文意を伝えられる工夫をしましょう”と書かれていますが、発想を転換しすぎて訳が抜け落ちてしまい、自分で勝手に解釈を変えるのが不安で結局原文に忠実に訳すようになってしまいます。
現在、“訓練方法”のひとつとして英字新聞のダイジェストが英語と日本語の対になっている記事を、訳し方に注意しながら書き写して読み直していますが、他に何か効率的な方法はあるでしょうか。
「翻訳とは意味を伝えることである」というのが私の信条なので、このような文章を入れました。
発想転換は自分で意識しないとできず、逐語訳ばかり続けて満足していると何十年経っても英訳レベルが上がりません(そのようなプロの翻訳者の仕事を嫌というほど見ています)。
忠実訳と本当の意味での翻訳で悩む方は確かに多いですが、この文章を「目標」として練習を重ねてください。
「自己満足の翻訳」にならないよう、私は自分の表現をインターネット検索でいつも検証しています。また適切な表現かどうか自然にわかるように、良い英語をたくさんインプットする努力も必要だと思います。
“書き写し”の勉強方法は良いと思います。特に「これは自分では思いつかない」「英語っぽい」と思う表現に注目すると良いでしょう。
訳の省略(訳す範囲)についてです。
日本語の原文から「ここはわざわざ1対1のように訳さなくてもいい。
ここまでは単語1つに含めることができる。」と判断する基準のようなものはあるのでしょうか?
「動詞や名詞1つで日本語の原文のどこまで含められるかを考え、文が簡潔になるように心がける」ことはとても良いと思います。
でも、確かに不安も伴いますよね。場数を踏んで(英文をたくさん読んで)感覚を磨くのが重要です。まずは、機械的に省略できるケースを覚えておくと良いでしょう。
以下は『英語なるほど!ライティング』からの抜粋です。省略について述べているので参考にしてください。

●繰り返される単語は省略できる

漢字は表意文字なので、たった一文字で、表音文字のアルファベットとは比べ物にならないほど多くの情報量を伝えることができます。
例えば次の文で「業」を英語で表すためにはアルファベットを8個組み合わせてbusinessやindustryとしなくてはなりません。

  ・パート社員の比率が高いのは、卸売業、小売業、およびレストラン業です。
日本語では1文字なので「業」が3回繰り返されてもまったく気になりません。しかし「業」を全部英語にすると、business, business,
businessと3つ繰り返され、とてもしつこく感じます。英語は同じ語の繰り返しを嫌う傾向が強いので、まとめてbusinessesとします。
  ・The proportion of part-timers is high in wholesale business, retail business, and restaurant business.
   ⇒The proportion of part-timers is high in wholesale, retail, and restaurant businesses.

また、数字の単位を表す単語は誤解が無いときは省略できます。
例えば、下記で、6000 unitsに続いて使われている2000は台数(units)を指していることははっきりわかります。
このようなときはunitsを省略してかまいません。
  ・バイクの生産台数は、先月2000台に対し、今月は6000台であった。
   The production of motorcycles was 6000 units this month, as compared to 2000 units last month.
   (省略できる)⇒The production of motorcycles was 6000 units this month, as compared to 2000 last month.

同様に、同じ動詞が繰り返されるときは省略すると簡潔な文になります。

  ・安全委員会では、本間さんが委員長に、関根さんが事務局長に任命された。
   In the Security Committee, Ms. Honma was appointed chair, and Mr. Sekine was appointed secretary-general.
   (省略できる)⇒In the Security Committee, Ms. Honma was appointed chair, and Mr. Sekine secretary-general.

  ・ジミー・カーターは1976年から1980年までアメリカ大統領でした。
   ロナルド・レーガンは1980年から1988年までアメリカ大統領でした。
   Jimmy Carter was U.S. president from 1976 to 1980, and Ronald Reagan was U.S. president from 1980 to 1988.
   (省略できる)⇒Jimmy Carter was U.S. president from 1976 to 1980, and Ronald Reagan from 1980 to 1988.
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テキストP-132の「-sensitive」のような、ハイフンを使った表現は、テキスト記載のもの以外に代表的なものはありますか?
どのようにしてこれらの複合語を正しく作ることができるでしょうか。
技術文書でよく使うのは「-proof」に加え「-resistant」です。 「耐磨耗」ならwear resistant、「耐摩擦」friction resistance、「耐候」weather resistantなど組み合わせていろいろな形容詞が作れます。
また、「-friendly」もあります。user-friendly、beginner-friendly、environmentally friendly・・などです。

そのほか、ちょっとおもしろい表現もあります。
  a camera-shy artist 写真嫌いの芸術家
  a we-were-there picture (そこに行ったことを示す)記念の写真
  I want to be don’t-care-the-exchange-rate-rich. 為替レートなんか気にしなくてよい金持ちになりたい!

ある程度、自由に形容詞は作れるのですが、まずは新聞などで出てくるものを収集すると良いでしょう。
「Internet-ready」のような単語のハイフンの使用方法がよくわかりません。
この「インターネット対応」を普通の言い方にすると、例えば次の文が考えられます。
  ・This card is ready for the Internet. このカードはインターネット対応です。
これを「インターネット対応」という形容詞にしてカードを修飾すると次の形になります。
  ・Internet-ready(形容詞) card(名詞)
このInternet-readyはハイフンをつけることでカードを修飾する一語の形容詞になります。ハイフンはこのように造語の働きがあります。
  ・This fabric is resistant to heat.⇒heat-resistant fabric
  ・This video is oriented to families.⇒family-oriented video
ready、resistant、orientedなどの形容詞を使ってハイフン形容詞を作るときは、上記のようにもとの文と逆の語順で2つの語をくっつけることが多いようです。
ただし、ハイフン形容詞は名詞をつなげて作ることも多くあります。
  ・five-minute bus ride, three-hour flight, 60-word-per-minute typist
このときはminute、hour、wordなど通常文では複数であるべきものが、ハイフンでつなぐと単数になるという規則があります。

このようなハイフン形容詞を造語するときにハイフンが必要な理由は、2つの語が一緒になって形容詞の働きをしていることを明確にするためです。
次にハイフンの有無により意味が変わる例をみてください。
  A) a single chip product
  B) a single-chip product
Aではsingleとchipがそれぞれ独立してproductを修飾するので「ある1つのチップ(IC)製品」という意味になります。
Bではsingle-chipがまとまって一語の形容詞になるので、「チップ(IC)を1個使った製品」という意味になります。
別の例です。
  A) a small business man 小さいビジネスマン
  B) a small-business man 中小企業の人

ハイフン形容詞は世の中で広く使われているものもあれば、自分で新たな表現として作れるものもあります。
英文を読むときに注意しているといろいろ面白い使い方を発見できます(テキストではP-23、P-132で説明があります)。
「訳語でこういう表現があるか分からない」という場合はハイフンで形容詞をつなげて一つの単語とするのと、すべて説明するのはどちらが良いのでしょうか?
【例】髪の毛ほどの太さのガラス製の繊維
 ①Hair -thin glass fiber
 ②Fiber made of glass that has same width with a hair
これは、文句なしに①の訳が良いです。これは「無理やり形容詞をつなげて」いる訳ではなく、ごく自然な英訳です。
翻訳は答えがひとつではないので、もちろん①以外の表現も可能です(「glass fiber as thin as a human hair」など)。
②は不自然で文法的なミスもあります。
Fiber made of glass that has the same width as a hair (冠詞と前置詞のミス)
しかし、このように直してもなお読みづらく(関係代名詞that以下がfiberにかかるのかglassにかかるのか不明瞭)、また冗長なので、通常はこのような言い方はしません。

実務翻訳の英訳においては、同じ情報量を伝えられるのならば、できるだけ少ない語句を使うことを目標に置くと良いです。
例えばglass fiberはfiber made of
glassと全く同じ情報を伝えますが、前者は半分の語数で目的を達成でき、それだけ読者に負担をかけなくなります。
また、長々と説明することにより構文が複雑になってくると、上記のような冠詞と前置詞のミスが生じる可能性も生まれます。
Googleでの検索方法について、例えば「live」の後にくる前置詞がわからない場合、“live * Japan”のように入力してもテキスト通りの形でヒットしません。
入力の仕方が悪いのでしょうか?
そうですね。この例で言うと“live *
Japan”だとあまりに検索範囲が広くなりすぎます。というのはliveという単語、Japanという単語どちらもいろいろな文でたくさん使われています。
さらに、その間にアステリスクを入れれば、実にさまざまな文がヒットしてしまいます(3,190,000 hits)。
この例では、もう少しキーワードを足して絞り込んだほうがよいです。
例えば、「~は日本に住んでいる」と書きたくて前置詞を探すのですから、“she lives * Japan” として主語を足すだけで検索範囲が狭まります。
実際やってみると、907 hitsで最初の10件に次のような例が見つかりました。
  ・She lives in Japan.
  ・She lives near Uto, Japan.
  ・She lives on Sado Island, Japan.
国ならばin、島ならばonを使うといった前置詞の用法の参考になります。

一般的に、検索してヒット数が多すぎるときはキーワードを足して絞り込みます。反対に、キーワードが多すぎたり、特殊すぎたりするとヒットしなくなります。
また間違った英語を入れるとヒットしないので、間違いだと気づくこともあります(例えば、“she lives on Japan” で検索すると何もヒットしません)。
このようにキーワードを工夫してみてください。最初のうちは望んだ結果がでなくても、試行錯誤をするなかで検索技術も上がります。いろいろ試してみてください。
インターネット検索で、今はヒット件数が多いものを選んでいますが、それも微妙な違いだったり数自体がとても少なかったりとあまり自信がもてません。
検索で適切な訳語を見極めるにはある程度経験が必要です。
また、検索のみで決めないで辞書などで裏をとる必要もあります。
検索結果では、コンテクストのなかで語がどのように使われているかに気を配ってください。
それをするには、語が使われている文書を数行でも良いので読む習慣をつけると良いでしょう。
「整備する」の訳語が解答例には沢山挙げられていますが、どうすればこのように多くの訳語が見つけられますか?
また、その訳語の当てはめ方として適切な方法はどうすればわかるでしょうか(TEXT P-52、Section 3、 課題3-C)
「沢山の訳語」を探すには、やはり良い辞書を手元に置くことがもっとも簡単です。辞書は中辞典や学生用ものではなく分厚い大辞典を使います。
例えば、研究社の『新和英大辞典』(オンライン版なら逐次アップデートされているのでベター)や、『ビジネス/技術実用英語大辞典』(海野編)がお勧めです。
このような辞書を使えば、訳語が沢山紹介されているばかりでなく、用例も多いので、用例を読めばどの語が適切かわかります。辞書が手元にないときは、日本語の類義語で考えます。
与えられた文に「整備する」があったとき、他の日本語に置き換えて意味が変わらない語を探し、その同義語で英訳すれば良いです。
“病気”の訳語について、illnessとdiseaseの使い分けはどうされていますか?
私が持っているイメージとしては、illnessは、人が何らかの病気になった状態で、diseaseは、具体的な病気を表すような気がするのですが、いかがでしょうか。
辞書で調べると、意味はほとんど同じで、使い分けについてあまり明確でないようです。
そうですね。私も同じような感覚を持っています。
但し、言葉の意味の範囲はdiseaseのほうが広くて、人間以外にも使え、また「社会の病弊」のような使い方もできますね。
プログレッシブ英語辞典で以下のような違いの説明がありました。
「disease:病気,疾病,疾患;(植物の)病気,病的異変.illnessは病気である状態・期間を表し,diseaseはその原因になるものを指す.伝染したり,かかったりして,医学の研究対象となるのがdisease」

加えて、ネットでWhat’s the difference between disease and illness?という質問に対して、ネイティブ・スピーカが答えているのを2つコピーします。
一般の人のこの言葉の使い分けは概ねこんな感じのようです。
①A disease and an illness cause the same things essentially, however, an illness, in some cases, (such as the common cold, the flu, gastroenteritis, and others) can be cured, while some diseases cannot.
②A DISEASE IS SOMETHING YOU HAVE FOREVER. SOMETHING THAT HAS NO CURE. AN ILLNESS IS SOMETHING THAT IS TEMPORARY. THAT CAN BE CURED.
howeverの使い方について質問です。
文の中で接続詞として使うときは、「; however ,」とすると習いました。
ただ、近年アメリカでは「,however,」のように普通にコンマで区切るようになってきていると聞きました。
変えた方が良いのでしょうか?
この用法について、友人のアメリカ人英語教師に聞いたら、やはり間違いであるとの見解でした。
勿論、英文法は年々変化していますが、ネイティブでない私たちは、最近の傾向(ここ4~5年)を真似して間違えるより、伝統的に正しいもの(何十年もの積みかさね)を選んだほうが良いと思います。
ただし、用法の変化が速いものに技術用語があります。 1995年にインターネットが商用化された頃、emailは不可算名詞でした(emailsと書くと無教養といわれました)。
しかし、数年後にはTIME誌でemailsが使われていました。このような変化は勿論受け入れましょう。
テキストに記載されていた「新編英和活用大辞典」のCD-ROM版を購入し使い始めています。
判断に迷った時に確認できるツールとして役立っていますが、もしテキストに掲載されている以外に何か活用方法があれば教えて頂けますか?
テキストにも書きましたが、活用辞典は「相性のよい言葉の結びつき」を調べる辞書なので、前置詞以外にも使えます。
私は、よく形容詞や動詞を調べるのに使います。
【例】「彼には~に対する深い洞察力がある」
 もっとも簡単に思いつく訳:He has a deep insight into….

この「深い」の訳としてdeep以外に何か良い形容詞はないかと探すときにはinsight「形容詞・名詞+」を引きます。すると、profound、keen、penetrating、perceptiveなど自分が思いつかなかった単語がたくさん見つかり、文脈に最適な語を選ぶことができます。
insight「動詞+」「+動詞」を引けば、He has 以外にgainが使えることも分かります。

このように、すぐに思いつくdeepやhaveだけで満足せず、そのつど調べてみることで自分自身の語彙を豊富することができます。
語彙・表現を増やすために、暇なときに思いついた単語をいれて辞書を引くと、おもしろい発見があります。
例えば、sky「形容詞・名詞+」を引いてみてください、空模様を描写するのに実にさまざまな形容詞が使えることが分かります。
辞書はちょっとした疑問がわいたとき (簡単な語でも)こまめに引くようにすると、勉強になります。
『英辞郎』を愛用していますが、「あまり活用できない」という話も聞きました。
様々な見解があるとは思いますが、信憑性は高いものなのでしょうか。
翻訳におけるお勧めの辞書はありますか。
『英辞郎』はとても便利ですが、時々、裏を取る(調べたものがそのまま本当に通用するのか確かめる)ことが必要です。
とても単純な例を挙げると、「カリウム」を調べると「kalium // potassium」と出てきます。何も考えないでkaliumを使うとまず理解してもらえないでしょう(「kalium」はドイツ語で化学を専攻する人でもない限り分かりません。一般の英語圏の人にとっては「potassium」が標準です)。
『英辞郎』に記載の全ての語句がこのような問題をはらんでいるわけではありません。
しかし、ときどき落とし穴があり、添削をしていて「なぜこんな言葉を選んでいるのだろう?」と思うと『英辞郎』の先頭に記載された用語であることが多いです。V また辞書の著作権を侵害しないように、『英辞郎』では載っていない訳語がたくさんあります。辞書を併用すると良いでしょう。

お勧め辞書は 『ビジネス技術・実用英語大辞典』です。
翻訳のプロが親しみを込めて「うんのさんの辞書」と呼ぶこの辞書には、実務の世界で使う英語・日本語の用例が満載で、一般の辞書には載っていない言葉の使い方を探すことができます。
豊富な用例は、翻訳者として活躍されていた海野夫妻(著者)が10年以上にわたってさまざまな文献から集めたものだそうです。
ご夫妻は、一般の辞書に飽きたらず実際の仕事で本当に役に立つ辞書を自ら創り上げてしまったのです。
サン・フレアアカデミーでは割引で購入できます。これを使うだけでレベルアップできる気がします。
テキストを学習するとき、専門用語の解釈や習得に苦労します。
どのような資料に目を通せばいいのか、もし参考になるようなものがありましたら教えていただけますでしょうか?
テキストの執筆にあたっては、できるだけ多くの分野の語彙を使い、いろいろな現場で仕事をしている方のニーズに応えようと努めました。
そのため、見たこともない単語もたくさんあると思います。
実際の業務ではたとえ得意分野の翻訳でも「知らない用語」に出くわすことは良くあります。Vそんな時、手近に参考文献があれば良いのですが、そんなことは珍しく、ほとんどはインターネット検索で情報収集します。
例えば、課題で出てきた「モーターの始動トルク」が何だかわからないとしたら、「トルクとは」というキーワードで検索すると、トルクについて解説された文書が見つかります。
なんとなく概念がつかめたら、今度は「torque definition」と入力すると、英語でtorqueについて同じように定義・解説している文章が見つかります。
Wikipedia(日英)もざっくりと情報を得るのには役立ちます。
これだけで「まったく知らない単語」が「ぼんやりと意味がわかる単語」になるでしょう。
定義の解説を読んでいると、次のキーワードが見つかることもあり、より深く知りたいときは次々に検索範囲を広くします。
あと、概念ではなく具体的なものを指す言葉の場合、イメージ検索(テキストP-124)をすると、意外と簡単に「モノの正体」を見つけられる場合があります。試してみてください。
英文を読んでいると、非常に長い文に出くわすことがあります。
内容を理解するのに苦労するのですが、長文にしなければならない理由、状況、特定の分野などがあるのでしょうか。
逆に、日本文を英訳する際に、長い日本文を短いいくつかの英文に分割して訳すのはあまり望ましくないのでしょうか。
特許や契約の文は特殊で、一文で書かなければならない、という規則もあるようですが、通常、私の場合は「読者が最も分かりやすい英語はなにか」を基準にして英語を書くので、よく長い文を2文に切ったり、ときには論理的になるように順番を変えることもあります。
「英訳」を学習する上で、「英作文」の学習はその助けとなるでしょうか。
おっしゃるとおり、英作文は自分の頭のなかにある原稿を英訳する作業と考えられます。
英作文で良いのは、頭のなかで「良い原稿(明確な日本語)」を書けることです。主語や目的語が省略されていない明確に書かれた原稿を英訳するのはとても楽です。
自分の英訳文をチェックするとき、最低限したほうが良いチェック項目があれば教えてください。
最低限はSVです。英語の基本はSVで、メインアイデアはSVによって表現されます。
ですからSVが弱いと文全体(メインアイデア)が弱くなります。
まずSVがきちんとあるか(活用はあっているか)をチェックし、それからSVが文頭にきているか、明解であるか、などを考えます。
『英訳の基本』の受講がもうすぐ修了します。
今後も和文英訳の学習を続けていくために何か良い問題集のようなものはあるでしょうか。
また、アドバイスがありましたら是非お願いします。
練習問題のついた英訳に役立つ本をいくつかご紹介します。
下記の本は②以外はすべて一般的な英語を扱っています(②は事務機関連の用例が主です)。
 ①『英語らしい英文を書くためのスタイルブック』 富岡龍名著(研究社)
 ②『実務翻訳:英語の発想で翻訳する』 松澤圭子著(アルク)
 ③『ネイティブ並みの英語の書き方がわかる本』 三浦順治著(創拓社出版)
 ④『発送転換で書く和文英訳エクササイズブック』 クリストファ・バーナード、勝見務著(プレイス)

自然な英語を目指すのに“近道”はありません。
良い英文をたくさん読み、表現を自分のものにする努力が必要です。『英訳の基本』に記載している“コツ”を意識して英文を読むと、「ああ、こんな主語の文は自分には書けないなあ、こんど真似してみよう」とか「この動詞の使い方は力強くて素敵」と気が付くことが多いと思います。
そのような小さな感動を重ねると良いでしょう。
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