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講座Q&Aコーナー

国際金融・経済英語科Q&A

通信科受講生から寄せられたご質問を紹介しています。
回答は、中級講座「金融・経済」担当講師の、宮川拓也先生、臼田郁子先生です。

金融・経済の基礎知識がなく、学習していても言葉や意味を理解できないことばかりです。
おすすめの勉強方法、本やテキストがあれば教えてください。また、金融業界での勤務経験がなくても翻訳の仕事はできますか?
翻訳者には英語力はもちろんのこと、日本語力と専門知識、調査力も要求されます。
このような理由から、その分野のベテランが翻訳者として活躍していますし、迅速性や機密上の観点から社内で翻訳することもよくあります。
ただし、業界経験者といえども業界全体に精通しているとは限りません。やはり体系的な知識を獲得し、新鮮な情報を吸収する努力が不可欠です。
金融・経済分野の翻訳対象には、白書や年鑑のような経済情勢に関する文書、証券会社等の投資情報、企業の財務関連書類など、さまざまな種類があり、それぞれ別の専門知識が必要とされます。分野によって学習すべきものは異なりますが、基礎知識を身に付けることと現在の経済・金融情勢を知ることが何よりも重要でしょう。
例えば「イミダス」などでは、専門家によって書かれた各種業界の用語解説を読みながら、業界の動向や課題を大まかに捉えることができます。また、「日本経済新聞」の経済教室の面には分かりやすい囲み解説が載っています。難解なテーマが取り上げられていることもありますが、日々の積み重ねによって理解できることが多くなり、使いこなせる語彙も増えていきます。日本の経済や企業に関する身近なニュースが平易な英語で書かれているNikkei Weekly(Nikkei.com で無料で閲覧できる記事もあります)も参考になります。
和訳の際、朝日新聞社の「用語の手引き」を参照しています。英訳の際に参考となる同様の手引書はあるのでしょうか。
例えば“50%”の英訳を“fifty per percent”と“50%”のどちらにすべきか迷います。参考書籍等はありますか?
本講座は、金融・経済となっていますが、その範囲は広く、金融分野も細分化が進んでいますし、経済ばかりでなく経営の分野も含まれます。
そして、分野ごとに用語も辞書も存在します。用語が統一されていると考えられるアカデミックな分野でも、学派によって複数の用語が存在する場合もあります。残念ながら、「これさえ見れば大丈夫」というものはありません。講座の始めに教材とともに、「<金融・経済>辞書および参考書」というプリントが配布されているので、専門分野に応じた辞書等を書店などで確認して入手してください。
ところで、表や見出しを除き、本文中ではone ~ twelveまでの数字はスペルアウト、それよりも大きい数字をアラビア数字(算用数字)で表記し、パーセントはpercentとスペルアウトするのが原則と言われていました。
しかし、現在発行されている英米の新聞・雑誌を見てみると、必ずしもそうなっているわけではありません。 例えば、The New York Times, Herald Tribune, The Japan Timesなどの新聞では5 percentとなっていますが、Business Week (米)、The Economist(英)などの雑誌では5%と表記されています。 前例に従うときや翻訳を分担しているときには、他の翻訳者との統一を徹底するか、依頼主に確認する必要があるでしょう。
それができない場合には、先に述べた原則に従う(すなわち50 percentと表記する)のが無難です。
言葉は社会情勢や必要に応じて変化するほか、新たな用語や表記方法が登場することもあるので、絶えず情報に触れていくことが肝要です。インターネットで検索する場合には、信頼できる情報源を活用してください。
テキスト1 P.1-30 課題3.2でも解説がありましたが、英文での主語の訳し方の違い(「~は」と「~が」)について、もう少し詳しく解説してください。
普段は日本で教わったSVOCなどの英文法を意識せずに英語を使っています。
そのためか、日本語の意味を噛み砕いたときに両者に大きな違いを感じられず、翻訳する際によく迷ってしまいます。
一般的に「~は」は話題、「~が」は主語を示すといわれています。
すなわち「~は」は、その文で「話題として認知あるいは期待されており、他と区別される事柄」に付ける助詞で、「~について説明する」ときに用いられます。一方、「~が」は「新たな話題となる事柄」に付ける助詞で、多くの場合は文中で主語になります。
例えば食堂で「私は(私の注文という目下の話題について言えば)カレーライス」とウェイターに伝えたにもかかわらず、カレーがAさんの席に運ばれてしまったら、(カレーを注文していないAさんの席に運ぶという間違いをしたウェイターにその新(真)事実を知らせるために)「私がカレーです」と言うわけです。 テキストP.1-30の1行目の文“Many economic factors affect the quantity supplied of a product.”の主語はMany economic factorsですが、既知の話題ではなく需要量の変化に関する文章の一部なので、「~が」を用いる必要があります。
テキスト1 P.1-38 例文4で、「"HALF PRICE UNDER 14" ― I wonder if that includes 14-year-olds.」というように、原文でダッシュ(-) が使われています。
ダッシュの意味と用法は英文でも和文でも同じなのでしょうか?
例文4のダッシュ(-)は、文と文の間に用いられ、単に2文が接続(関係)していることを示します(引用していると考えることもできます)。
ただし、実務翻訳の場合、英文のダッシュは言い換えを表すときに用いるのが一般的です。
ご参考までに、日本語でのダッシュの用法を紹介します。
 ・文と文の間、字句と字句の間に用いて、時間の経過を表す。
 ・括弧のように2本のダッシュで囲んで、説明や副題を表す。
 ・行頭に用いて引用を表す。
 ・単語の後に用いて省略を表す。(Wikipediaより抜粋)
和訳文での丸括弧( )の使い方について、丸括弧ではなく、カンマで表現された「, if not most,」のような文章は、「(ほとんどとは言わないまでも)」のように括弧の中に入れてよいのでしょうか。
実務翻訳では、原文をできるだけ尊重しつつ、原文のスタイルに合わせて訳文を作成するのが原則であり、原文にない括弧を乱用するのは禁物です。
ただし、補足説明や例示など、重要性が高くない内容や括弧を使った方が訳文がスムーズになる場合には括弧で囲んでもかまいません。
ご参考までに、実例を以下に紹介します。
【例1】
Net earnings totaled $315.5 million for fiscal 2008, versus $672.6 million in fiscal 2007, while EPS for the year was $0.43, compared to EPS of $0.87 in fiscal 2007.
2008年度の純利益は3億1,550万ドル(2007年度は6億7,260万ドル)、EPSは0.43ドル(同0.87ドル)となりました。
※このように、比較対象を括弧に入れると話題の中心が明確になって、読みやすくなる場合があります。
【例2】
The IMF reaffirmed its controversial earlier estimate that total losses in this cycle could total $945bn – a number that combines mark-to-market losses on subprime-related securities and estimates of likely losses on loans IMFは、このサイクルにおける損失合計額(サブプライム関連証券の時価評価による損失額と融資による損失予想額の合計)が9450億ドルに達する可能性があるとの見通し以前に示して物議を醸したが、同じ予測を再度確認した格好だ。
※ダッシュ以下のa number that…が、直前の$945bnと同格・補足説明の関係になっていることに着目してください。原文ではダッシュなので、訳文でも括弧の代わりにダッシュを用いてもよいでしょう。
:(コロン)、;(セミコロン)、「つまり」と訳せそうなor、名詞にカンマをつけて名詞句が続く同格表現などが頻出する課題文がありました(テキスト2 P.2-6 課題4.3)。これらのすべてを「つまり」、「すなわち」、「言い換えれば」などと訳すべきなのでしょうか。
セミコロンには接続詞を使わずに前後の文を結ぶ働きがり、前後関係に応じて訳を決定します。言い換え、逆接、例示など、文の接続関係は異なりますが、特に6行目のby contrastや11行目のthat isのように、論理を決定付ける表現が用いられている場合は訳す必要があります。一方、8行目のように接続関係が強くない場合(例示や補足)については、逐一訳さなくてもかまいません。
ちなみに:(コロン)は、同様の別の表現(しばしば具体例を挙げる場合など、「すなわち」の意味)で言い換える場合に用います。訳せる場合は訳しましょう。
テキスト2 P.2-34 課題6.5(4)での輸出、輸入を後続の文で指し示す場合に、its(=Japan)とtheのいずれにすべきか迷いました。
代名詞と定冠詞のどちらを使うのかわからないときはどうすればよいのでしょうか?
ある国の輸出(額)、輸入(高)が話題となっている場合、2回目以降は定冠詞・所有格を共に用いない場合が多く見られます。
ただし、所有格または定冠詞を用いてJapan’s exports (imports) を受けても間違いではなく、この場合は冠詞ひとつで誤訳になるものでもないので、それほど神経質になる必要はないでしょう。
冠詞の問題は一筋縄にはいきませんが、英英辞典やgoogle検索などで名詞と冠詞の使い方を比較検討し、一般的な用法で表現することが大切です。
【例】
Japan's GDP shrank at an annualised rate of 12.7 per cent in the December quarter, its worst result since the Arab oil embargo in 1974, in response to falling exports and business investment.
※この場合は最初にJapan’s GDPとあり、日本が話題に上っていることが明白なので、exports(輸出)、business investment(設備投資)のどちらにも無冠詞・複数形が用いられていると考えられます。
なお、the export of coffee(コーヒーの輸出)のように、exportがexportationの意味で用いられている場合には(of以下で限定されているため)theを用います。このように、冠詞の使い方が異なる名詞には特に注意が必要です。
「増加(する)」を表す英単語としてincrease、rise、growが頻出しますが、どのように使い分けるのでしょうか?
英語は表現の変化を好む傾向がある言語です。同じ単語を繰り返すのを避け、動詞を変えたり、さまざまな形容詞で同一人物を言い換えたりすることがよくあります。専門用語は言い換えられませんが、「増加する」や「減少する」のように多用される表現は、各種の動詞で表現されます。
たとえば、「急増する」については、sharply increaseだけでなく、accelerate, balloon, skyrocket, soar, surgeなど、増加の仕方や程度に多少の差がある単語も存在します。特に新聞や雑誌では、これらの表現を駆使して多用な言い換えを行っています。
「程度」に関わる表現を以下に示します。。

Increase またはdecreaseと併走される副詞
●大幅な変動
greatly, drastically, considerably, significantly, steeply, substantially, largely, highly, remarkably, notably, strikingly, unusually, magnificently, eminently, conspicuously, extraordinarily, extremely
●小幅な変動
narrowly, marginally, slightly, insignificantly, little, lightly, faintly, moderately, only, barely

●速い変動(「大幅な変動」は「一定期間に急速に変動すること」なので、意味は同じといえます)
rapidly, fast, swiftly, speedily, promptly, hastily
●遅い変動
slowly, gently, gradually

increase やdecreaseに副詞を添える代わりに、他の「動詞」で表すこともできます。
●増大・上昇
boost, broaden, develop, expand, gain, grow, rise, strengthen, widen
●減少・下降
lose, go down, fall, diminish, decline, shrink, reduce, lessen
●急速な上昇
accelerate, balloon, climax, skyrocket, snowball, soar, surge, swell
●急速な下降
collapse, crash, decelerate, drop, plummet, plunge, sink

実務では、上記のすべてを使いこなす必要はないと思いますが、たとえば副詞と動詞を3つずつでもバリエーションとして語彙の引き出しに入れておけば、単調さの回避に役立ちます。
「急落」と「暴落」とでは、意味に何か違いがあるのでしょうか。(テキスト3 P.3-12 課題7.4-1)
どちらも「急激に下落する」という意味ですが、相場の下落幅が特に大きい場合を「暴落」と呼んでいるようです。過去の出来事でいえば、スターリン暴落(1953年)、ケネディ・ショック(1963年)、ニクソン・ショック(1973年)、ブラックマンデー暴落(1987年)などが代表的です。最近では、2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻をきっかけとして株の投げ売りが連鎖し、10月16日の日経平均株価の下げ幅が史上2番目(-1,089円、下落率は11.4%)を記録するなど、まさしく株価暴落の様相を呈しています。
厳密な定義はないものの、「暴落」とは「通常では考えられないような大幅な株価・為替の下落を指し、新聞などで大きく取り上げられる規模の下落」と解釈しています。このような場合を除いては、「急落」を用いた方がよいでしょう。
単語の指し示す内容やニュアンスの違いを知るためには、英英辞典が役に立ちます。
以下は、「下落」を表す3つの動詞をOxford現代英英辞典で調べたものです。
●plunge (v,n) (急落)
to move or make sb/sth move suddenly forwards and/or downwards
to decrease suddenly and quickly (同意語 plummet)
●tumble (v,n) (下落、暴落)
to fall downwards, often hitting the ground several times, but usually without serious injury; to make sb/sth fall in this way (転がり落ちてバウンドしている感じですね。)
to fall suddenly and in a dramatic way
to fall rapidly in value or amount
●slump (v, n) (暴落、急落)
to fall in price, value, number, etc., suddenly and by a large amount
また、Barron’s Dictionary of Finace and Investment Termsによると、
short-term drop in performance. 中略 A slump is considered to be a temporary phenomenon, from which the economy, investment or employee will soon recover.とあり、すぐに回復する一時的な下げを意味しています。

以上のように、それぞれ表す内容が少しずつ異なりますが、概ね「急落」という意味です。課題文では、表現に変化をつけるために表現を言い換えていると考えてよいでしょう。「暴落」はかなり大規模かつ深刻な下落で、さしずめcollapseといったところでしょうか。株価が上がり下がりを繰り返している中での大幅な下げについては「急落」程度の表現が適切と考えられます。
ちなみに中邑悟著「株式用語1000辞典」(2002年日本実業出版社発行)には、「『急落』は、予想もしなかった、急な大幅下げのこと。あっという間に下げる様。『暴落』は、全銘柄が荒々しく下げる状態。日経平均株価で500円程度の下げ。(中略)大暴落は1000円以上。さらに、『崩落』とは、底なしの感じで、ずるずると下げていくこと。(中略)救いようのない下げで崩れていく相場。」とあります。
increase/decline(変化率)の訳として、「増加する/減少する」以外に「上昇する/下落する」も使えますか?
「率」は「増加する」と「上昇する」のどちらでもよいでしょう。
ただし、increase/declineする対象によっては、増加/減少と上昇/下落のいずれしか使えないことに注意しましょう。
例えば“increase”という同じ動詞でも、価格は「増加」ではなく、「上昇」、体重は「増加」というのが自然な組み合わせです。このように、ひとつひとつの単語に固定された訳語があるわけではありません。重要なのは、その語が含まれている文や文脈を適切かつ自然な訳語で表現することです。
“Exports and Imports, Mainly to and from Asia, Increasing”や“Volume of exports, mainly to Asia, recovering”
(テキスト3 P-3-8 課題7.3-1表題)は主部と修飾部がどこなのか分かりにくいのですが、このような形になっているのはなぜですか?
新聞や雑誌の見出しは、限られたスペース内で目を引くために、大きな文字の使用、省略・代用など、一般の文章とは若干異なった表現が用いられています。進行形や受動態のBe動詞が省略されることもあります。
上記の表題では、進行形であるExports and Imports are increasing. とVolume of exports are recoveringのBe動詞が省略されているものと考えられます。
ちなみに、本文は欄外に示されているとおり、英文経済白書からの抜粋であり、日本語の経済白書を英訳したものです(和文・英文とも政府刊行物として市販されています)。
“supply and demand curves”の和訳は「需要曲線および供給曲線」と「供給曲線および需要曲線」のどちらがよいのでしょうか?
英語ではsupply and demandという順序が慣例です。一方、日本語では「需要と供給」が慣例なので、「供給と需要」という順番では違和感がありますね。
同様に、日本語の「輸出入」を英語ではimports and exports(輸入出!)と表現します。“in and out” (出入ではなく、入出!)と同じ要領です。
課題文に“the Company”という単語がありますが、CompanyのCが大文字になっているのはなぜですか?
一般名詞として、ある会社に言及する場合はthe companyと小文字で表記しますが、ご指摘のとおり、営業報告書等で自社に言及する際には、the Companyと大文字にします。
例えば、三菱商事(Mitsubishi Corporation)のように、CompanyやCo., Ltd.を社名の英文表記に使っていない会社でも、英文営業報告書では自社をthe Companyと表現しています。
ひとつの文章の中で、be expected to~を2文に用いましたが、同じ表現を繰り返してもよいのでしょうか。
「考えられる」と「見込まれる」はどちらも近い将来の時点で客観的に期待される状況を示し、その意味ではexpectが最も中立的な表現です。類似表現としては、概算のestimate、発話者の立場にとって良いという主観が入った期待がhope、必要な手段を講じて見越すという意味が含まれるanticipateがあります。「見込む」「期待する」という同じ日本語で表されたとしても、英語の動詞の表す意味は異なります(英英辞典で研究してください)。客観的予測を淡々と述べる本課題ではexpectが適切です。繰り返しによる単調さを避けるには、後に続く部分に別の表現を使うなど工夫しましょう。
“Japan's”と“Japanese”の訳出で迷っています。
「日本のIT関連設備投資」を英訳する際、“Japan's IT-related investments”と“Japanese IT-related investment”はどう違うのでしょうか?
基本的には、“Japan’s”という所有格を用いた“Japan’s investments”も、“Japanese”という形容詞を用いた“the Japanese investments”も指示内容は同じであり、どちらも使えます。ただし、前者は所有格なので冠詞が不要ですが、後者は「形容詞+名詞」なので冠詞が必要という点には留意してください。
なお、厳密には以下の違いがあります。
所有格を用いた表現は短いことから新聞などのジャーナリズムの分野で多用され、形容詞を用いた表現は正式な文書やアカデミックな論文で使われます。
さらに、“Japan’s investments”では「投資額」の方に視点が置かれており、例えば統計数字が挙げられている場合に、「世界の投資額は~で、日本の投資額は~で、米国の投資額は~」などと述べるときに用いられる傾向があります。 一方、“the Japanese investments”の方は、「日本の投資額」をテーマに述べているというニュアンスがあるようです。
英訳の際、「a」と「the」の付け方によく迷います。
この2つの使い分けや、誤用を避けるための注意点など、分かりやすいルールがあれば教えてください。
文法書などを参照すると、冠詞の使い分けは以下のように説明されていると思います。
不定冠詞(a, an)は、
●oneと同語源であるので、単数の可算名詞に付けられる。
●不特定なものであることを表す。
●単数の可算名詞が初出の時に使われる。
定冠詞(the) (thatと同語源)は、
●単数にも複数にも用いられ、可算名詞にも不可算名詞にも付けられる。
●特定なものであることを表す。
●既出の名詞、唯一のもの、状況から特定できるものに使われる。
●序数や最上級に使われる。

そのほかに、以下のように冠詞を付けない場合もあります。
●物質名詞を特定でなく一般論として言及する場合。抽象名詞。
●Bed, church, schoolなどが本来の役割を果たす場合。。

とはいえ、実際問題としてノンネイティブには判断しかねることも多いことでしょう。
辞書を引くと、可算名詞と不可算名詞のどちらに該当するのかが明記されていますが、同じ名詞が可算と不可算の両方で使用されることもよくあります。その場合、抽象名詞と普通名詞のいずれの意味で用いられているかによって冠詞を付けなければなりません。
また、可算名詞の特定・不特定の区別については、既出の名詞で言い換えている場合もあり、その場合には名詞自体は初出でも意味上は既出の対象を示していることから“the”を付けます。
すなわち、形式的に初出かどうかよりも、概念的に初出か既出(特定されている)かで使い分けるということです。
全角と半角、漢数字とアラビア数字といった表記について、和訳の際に何かルールはあるのでしょうか?
ネット上のニュースなどでは全角と半角が見られますが、産業翻訳のほとんどは横書きであり、そのデータはPCでやり取りされます。
成果物の納品後にフォント変更やその他の編集作業が行われる場合には、数字列が全角で入力されていると、編集時に改行がずれて数字列が分断されることもあります。そのような理由からも、数字は半角で入力することをお勧めします。
なお、アラビア数字と「円」、「年」などの漢字との間には半角スペースを入れないのが一般的ですが、半角スペースを入れていないにもかかわらず、半角と全角が混在しているために半角スペース空いて見えることがあります。
表を除き、本文中では1万以上の大きな数は漢数字を用いて「1兆3000万円」というように表記します。その際、3000万を「3,000万」とはしません。“ , (カンマ)”は、アラビア数字(算用数字)の3桁ごとの区切り(thousand, million, billion, trillion)に対応しているものであり、4桁ごとが単位の漢数字(万、億、兆(兆とtrillionは同じ13桁目です))とは別の桁の捉え方なので、混在させるべきではないからです。
商品価格が基本的に万円単位の不動産広告などでは、「3,600万円」というようにカンマを入れるのが一般的ですが、新聞では縦書きでも横書きでも数字にはカンマを入れず、「3600万円」、「3億1000万ドル」のように表記します。「1億5000万」と、「1.5億」のどちらにするかは、他の数字との比較の必要性やバランスによります。「3億」や「50億」などの数字が並んでいる文章なら「1.5億」の方が桁が揃って分かりやすくなります。
また、株価はニュースでは「1万4372円」のように表記していますが、いくつもの銘柄の株価が羅列されている場合は、1万以上であっても、14,372円、15,607円とした方が分かりやすくなるので、その方が好まれることもあります。
基本ルールに従いながらも、文書の目的に応じて柔軟に対応すべき要素も存在します。
文書中で数字表記の統一を図ることが何よりも重要ですが、依頼主の希望に合わせることも不可欠なのです。したがって、前例があればそれに従ったり、疑問(前例の改善案もあるかもしれません)を感じた場合は早めに依頼主に問い合わせるなどしましょう。
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